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タコの吸盤がロボットを進化させる?

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1401-4 関西大学が研究開発したタコの吸盤を模した真空グリッパが話題になっている。
海に潜ってタコを捕まえたのはいいが、手に巻きついて離すのに往生したことがある。また、韓国釜山の魚市場で、買ったばかりの小さいタコをその場で調理してもらい、生で食べたことがあったが、その時も口の中でタコの足が吸い付いて食べづらかった思い出がある。
タコの吸盤機構は吸盤と漏斗部とで構成されており、まず漏斗部の筋肉を使い漏斗部が対象物に張り付き、密閉した空間ができたところで吸盤の筋肉を使い吸盤内部の空間を広げ負圧を発生させ、外部との大きな差圧により高い吸着力を実現していているのだという。
この原理を真似て、薄膜状の吸盤をもつグリッパを作った。吸盤内部は真空ポンプへとつながっており,吸盤内部の圧力を下げることができる。そのため、吸盤を把持対象物に密着させ吸盤内部の圧力を下げると,大気圧との圧力差により対象物を把持できるというもの。
これの何がすごいかというと、一般的な真空吸着と異なり吸盤内部の排気系と大気が膜によって遮断されているためリーク(漏れ)がないので、吸盤が対象物に接触していなくても、全ての吸盤内部の圧力を下げることができるので、凹凸のある対象物を把持できる。さらに吸脱着の制御が 1 つの真空計と 1 つのバルブの切り替えだけで済むので装置の設計が簡単。しかも、排気系が大気とつながっていないので、ごみが排気系に詰まることによる吸着力低下も無いのだという。
ハンドをシリコーンゴムなどの柔軟なもので作製することにより①凹凸があっても吸着できる②対象物が球面であっても、球面に沿って吸着できる③対象物が傾いていても吸着できるので、どんな形状のものでも吸着~移動出来ることになる。
この、グリッパを使えば、ロボットアームにより人間に近い働きをさせることが可能になり、オートメーション装置が飛躍的に進歩することが期待できる。

鳥を真似て飛行機を創り、蜘蛛糸や絹糸を研究してナイロンを発明するなど、人間は自然界に学んで、科学を進歩させてきた。すなわち、科学が進歩すれば進歩するほど神に近づいてきたといえる。
近年、電子顕微鏡の性能が飛躍的に進歩したおかげで、動物や植物を研究してその不思議な能力を真似して発明品につなげようとする研究が盛んになっている。そんなことを思いながら、野山に出て、植物や動物を慈しみながらの散策は楽しい。
(ジャーナリスト 井上勝彦/絵:そねたあゆみ)

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