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ワカメの色の神秘  

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03-21 陸上植物のほとんどが緑色をしているのに対し、海藻類は生息している海の深さによって、浅いところから順に緑色、褐色、紅色のものが分布しており、それぞれ、緑藻類、褐藻類、紅藻類と呼ばれています。これは、海中では水深によって届くことのできる光の波長が限られているので、その水深に届く光を効率よく利用するために環境に体色が適応しているからだと考えられています。

ワカメは食卓で見かけるときは緑色をしていますが、褐藻類に属していて本来は褐色をしています。ワカメの褐色は、緑色をした葉緑素クロロフィルと黄色のフコキサンチン(カロテンの仲間)という補助色素の二つの色が混じり合って出来ています。クロロフィルの緑色が比較的に安定なのに対し、フコキサンチンは熱に弱く、調理や保存中に容易に分解されて退色します。したがって、普段私達がワカメを目にするときには、フコキサンチンがすでに失われてしまって緑色をしているという訳です。

フコキサンチンは単なる色素ではなく、優れた健康効果を持っています。他のカロテノイドと同様に抗酸化作用を持っている他、脂肪の燃焼を促進するダイエット効果、がん細胞を自殺に追い込むアポトーシスという作用をもっていることなどが知られています。

優れた効能をもつフコキサンチンですが、残念ながらワカメに含まれるフコキサンチンは微量であり、また分解しやすいので、有効な量を日常の食事から摂取することはなかなか難しいようです。

フコキサンチンの摂取源としてはまだ課題の残るワカメですが、栄養学的には優れたものがあります。ワカメにはカルシウムやヨウ素などのミネラル類、カロテンやビタミンKな どのビタミン類が豊富に含まれています。

諸外国では欠乏症になることも多いヨウ素ですが、日本人がヨウ素欠乏症にならないのはワカメを始めとする海藻類を ふんだんに摂取しているお陰だといわれています。また、ワカメは食物繊維のアルギン酸やフコイダンといった機能性のある食物繊維を含んでいます。それらの食物繊維は、血圧やコレステロールを低下させる働きを持つことが知られています。さらに、フコイダンは抗がん作用もあるのではないかということで近年急速に研究が進んでいます。

(文:医学博士 食品保健指導士 中本屋幸永/絵:吉田たつちか)
2010-03

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