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細かい所まで見る癖 

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2009.02-5みなさんは、目に見える雪の結晶を見たことがあるだろうか。クリスマス時期にデパートなどのショーウィンドウに白いスプレーで色付けられる、あの結晶を初めて見た感動をお伝えしたく筆を執ってみた。一年を 通し比較的温暖な地で育った私は、結晶どころか雪を見るのも珍しく、幼いころフワッと一瞬だけでも粉雪が舞い散った日には驚喜したことを今でも思い出す。
さて、つい先日、休日を利用し近くの雪山に遊びに行ったのだが、地元から近場ということもあり、綺麗な雪化粧にはあまり期待せずにバスへ乗り込んだ。たった3時間の小旅行だったがバスの揺れがなんとも心地良く、ついつい深い眠りについてしまった。そして旅先に着いた頃、ふと目を覚ましバスのカーテンを開けると、そこには一面に銀世界が広がっていた。何ともいえない美しさと、今までに見たことのない光景にしばし呆気にとられた。人は今までに経験したことが無いものに触れたり感じたりした時に大きな感動の渦に巻き込まれるが、私はこれほど景色や眺めに感動したことが今だかつてあっただろうか。バスを降り、純白の大地を踏むことさえも大人ながらにわくわくしてしまった。静かな街の中で真っ白なパノラマの世界を堪能していると、パラパラと雪が降ってきた。しばし頭上を眺めながら、私に向かって降り注がれる雪をじっと見ていると、私が着ている黒のジャケットに雪がチラホラと水玉模様のように吸着していくのが見えた。というより真っ白な空気の中、黒いジャケットの水玉模様が異様に目立っていた。そしてよく見てみると、私の黒いジャケットに小さな可愛い雪の結晶がいくつも連なっていた。雪の結晶なんて小学校の教科書でしか見たこともなく、ましてや肉眼で見えるとも思ってもいなかったため初めは自分の目を疑った。 が、やはり色々な形をした雪の結晶だ。まるで蝶のように一瞬だけ私の服にとまって、フッと消えていく。 私は何分、いや何十分、ジャケットの袖を眺めていただろう。この雪の結晶を見た日から、色々な物を細かい所まで見る癖がついてしまった。リビングに置いてある観葉植物の一枚の葉を手に取り、眺めていると力強い葉脈が見えた。散歩ルートでいつも見かける樹齢100年の木の幹は硬く細かい”しわ”で覆われていた。窓際にあるお気に入りのサボテンは沢山の鋭い針が均一に並んで私を威嚇しているようだ。何気ない毎日の生活の中で自然の雄大さを肌で感じながら、常にあの雪の結晶が脳裏に浮かぶ今日この頃である。
(ニュージーランド在住 Reeoko/絵:吉田たつちか)
2009.02

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