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納豆という不思議な食べ物

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16-04-1●米食文化が納豆を生んだ

食文化というのはおもしろいもので、ある地域で美味しいと食べられているものが、別の地域ではまずいとか、グロテスクといわれたりすることがよくあります。日本の朝の定番『納豆』もその一つです。
世界で豆を発酵させて作る『納豆』を食べるのは、基本的に日本だけ。なぜ日本で納豆が生まれたのかは、確かなことはわかっていませんが、少なくとも平安時代には食べられていたそうです。
日本に稲が伝わったのは弥生時代ですが、納豆はワラに煮た大豆をくるんでしばらくするとワラらに付着している納豆菌が発酵してできるもの。納豆が生まれたのは、我々日本人が多民族以上に稲やコメを愛し、大量に作って食べていたからに違いありません。
なんでも江戸時代、日本人は一日5合ものおコメを食べていたそうです。これがどれくらいの量かというと、おコメを炊いたごはんをお茶碗に軽く2杯分といったところですから、毎日ざっとお茶碗10杯弱のごはんを食べていたことになります。
それだけのおコメを作るとき同時に大量のワラが出ます。日本人はワラも最大級に利用します。履物は藁草履に草鞋(わらじ)、笠に蓑、ワラで編んだロープ、刻んで肥料にもします。敷物の畳表、ござ、米俵に神社のしめ縄に呪いの藁人形……、と、いたるところでワラを使っていました。

●納豆発祥の謎

それほどワラに親しんでいる日本人です。おそらく納豆が日本で生まれたのも、日本人がそれだけワラに近いからであったからでしょう。一説には、煮た大豆をワラで編んだ俵のようなもので運んでいるうちに発酵したのがはじまりではないかというもの。
あるいは、ゴザやムシロのような敷物に煮た大豆を置いているうちに自然発酵したという説もあります。
他に源義家が奥州(いまの岩手県)に遠征にいったとき、地元の農民に大豆を馬の飼料として煮た大豆を差し出させたところ、詰めていた俵から納豆ができたのが最初という説もあります。
どの説が正しいのかはわかりませんが、最初に食べた人に「よく食べましたね!」と、いってあげたいですね。なんといっても、あの匂いと粘り、初めて見た人は発酵しているというより、絶対「豆が腐ってる!」って思ったに違いありませんから(笑)。

●いまや関西や九州でも美味しい納豆がゾクゾクと作られている!

毎年、全国納豆協同組合連合会が主催する納豆日本一を決める大会に『納豆鑑評会』というのがあります。2016年の最優秀賞・農林水産大臣賞を獲得したのは東日本…… ではなく愛知県のメーカー。優秀賞は小粒・極小粒部門など6部門があるのですが、栃木県のメーカー以外京都府、兵庫県、鹿児島県、大分県と西日本ばかり。
これまで納豆を西日本の人は「あんな臭いもん食べられまへんがな」と、毛嫌いしていたはずなのになぜ? と。お思いの方もたくさんいることでしょう。
でもいくら毛嫌いしていても、納豆の栄養価の高さ、健康効果はもう全国に人に知れ渡っているわけで、例えば納豆を食べれば血液サラサラになり脳血栓、心疾患予防、美肌効果も高く、カルシウムも多いことから骨粗しょう症予防、腸内環境を良好にする効果、高蛋白質などなど、もういうことがないくらい優れた健康食品でしかもお値段お手頃。
と、くれば、これまで毛嫌いしていた西日本の人だって、食べたくなるはず……、ただし……、あの臭いさえなければ……
そこで西日本の納豆メーカーさんは考えた。「そうなら、臭わないより美味しく食べやすい納豆を作れば西日本の人も食べてくれるはず」と……
そして次々に、高品質で臭わない美味しい納豆が西日本で誕生したというわけ。その企業努力に頭が下がります。
納豆はお値段もお手頃で健康に良く、ご飯によく合う食べ物。できれば毎日食べたいものですね。

(文:食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ)/絵:そねたあゆみ)2016-04

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