UA-77435066-1

牛乳物語

 | 

カラー1●アジア人は牛乳が苦手

あなたは牛乳をゴクゴク飲めるタイプ? それともお腹がゴロゴロするタイプでしょうか?
なんでも日本人や中国人は8割以上の人が牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなるそうです。中央アフリカの黒人や南米の先住民なども苦手な人が多いらしいのです。
牛乳を飲んだら腹がゴロゴロするという症状はズバリ「乳糖不耐症」と呼ばれ、小腸内で乳糖分解酵素という酵素が十分に作られないため、牛乳などに多く含まれる乳糖を消化することができないのだとか。
牛乳を飲んできたのは、主に北欧や西ヨーロッパの人たちで、そういった人たちでも1~2割ほどの人がお腹の調子が悪くなるのだそうです。
でもヨーロッパの人も大昔から牛乳を飲んでいたわけじゃなかったんです。
●ヨーロッパで牛乳が飲まれるようになってわずか160年程度

実はヨーロッパで牛乳を飲料として飲むようになったのは1850年くらいから。そんなに飲料としての牛乳の歴史は長くないようなんです。
牛の家畜化は約1万年前にメソポタミアあたりではじまり、搾乳は8千500年前あたりから行っていたというから、かなりの歴史があります。ただし……、牛乳は飲み物というより、チーズやバターを作ったり、料理の材料として使っていたらしいんですね。
料理の材料って? そうですね。歴史的に有名なのは今から2500年ほど前のインドにシャカ・シッタールダという人がいました。そう仏教の開祖お釈迦さまです。お釈迦さまが悟りを開く直前、「よし! 悟るまで断食をやめないぞ!」と決意。40日間の断食をしていたとき、村娘が痩せ細ったお釈迦さまを気の毒に思って『牛乳がゆ』を出すんですね。お釈迦さまはついそれを食べちゃった。そしてその後に悟ったといいます。お釈迦さまの悟りに、牛乳が役に立っていたというわけです。
このように牛乳は飲料としてはほとんど使われなかった。なぜでしょう?
理由はカンタン。「乳糖不耐症」はあるし、それに生の牛乳ってとても傷みやすいんです。牛乳は栄養満点。栄養は人間に対してだけではなく細菌たちにとっても栄養満点なわけで、危険な細菌が牛乳で繁殖してしまうと死に至る場合こともあったのです。
だから160年前あたりだと牛乳が飲めるのは、牛を飼っている人かその近所の人のみ。
そして1866年に細菌学者のパスツールが、低温殺菌法を考案。これが牛乳にも応用できることがわかって、牛乳を安心して飲めるようになりました。
もっともアメリカで低温殺菌法が義務づけられたのは20世紀のはじめ。それまで不潔な牛乳を飲んで亡くなった子どもも多かったといいます。

●牛乳は体に悪いの?

日本では日清・日露戦争で傷ついた兵士が、栄養剤代わりとして牛乳を飲んだそうですが、やはり一般に広まったのは戦後です。
終戦後、アメリカの救援食料である脱脂粉乳による学校給食への導入されました。当時の脱脂粉乳は本当に不味かったそうです。学校給食で脱脂粉乳から牛乳へと変わったのは60年代です。
当時は各家庭への牛乳配達も多く行われていましたが、70年代半ばをピークに牛乳配達からスーパー等での紙パックを買うというふうに移行していきました。
さて最近「牛乳は体に悪い論」がよく目につきます。ただよくよく調べてみると科学的根拠はどうも薄いようです。いろいろなデータをみると、やはり牛乳は栄養価・健康効果が高いようです。しかし、前述したように乳糖不耐症の方がたくさんいるのは事実。
そういう場合は、お腹に優しい牛乳にするとか、ヨーグルトのような乳製品にしたり、料理に利用したりしてはいかがでしょう。
ただ「牛乳は体に悪い」と思って人はムリして飲むこともないと思います。「牛乳は体にいい」と思っている人も、摂り過ぎ注意でしょうね。すべての食べ物は「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですから。
(食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ))2016-07

 

コメントを残す