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『古事記』の神々(その1)

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(絵:そねたあゆみ) 

 日本に残る最古の書物として広く知られているものに、『古事記』と『日本書紀』とを挙げることができます。『古事記』は西暦712年以降、『日本書紀』は720年に完成されたとされています。いずれも、当時の天皇、天武の命令で作られました。
 しかし近年の研究によって、いずれの書物についても真偽が疑われる記述が指摘されるようになってきています。『古事記』最終章に登場するのは推古天皇ですが、この女帝の摂政として活躍されたとされる厩戸(うまやどの)王子、別名「聖徳太子」についての言い伝えがその最たる例と言えるでしょう。
 また、大化の改新、あるいは乙巳(いっし)の変と呼ばれる、645年に起きた一連のクーデターにおける、のちの天智天皇(天武天皇の兄)の振舞いを正当化するために、蘇我氏が敵役として描かれているというのも、この数年で徐々に知られるようになってきたことです。
 つまりこれら2つの書物は、天武天皇やその妻である持統天皇(母親は蘇我氏)が、自分の血筋が天皇家にどれほどふさわしいかを、国内外に示すために編纂されたものであるとの見方が強くなってきています。
 『古事記』は3巻から成っています。上・中・下、です。中つ巻は、架空の初代天皇、神武天皇のいわゆる「東征伝説」などに始まっています。どの天皇からが実在したのかは、議論が分かれるところだと思います。なので、これからは何回かに分けて、『古事記』の中でも明らかに「伝説」である部分、「上つ巻」について紹介していこうと思います。
 天と地が初めて分かれたとき、天上界(高天原)には、三柱の神さまがおられました。「造化の三神」と呼ばれ、性別を持ちません。さらには人間に姿を見せることもありません。
 天之御中主(アメノミナカヌシ)の神。この神さまは、高天原の中心におられました。高御産巣日(タカミムスヒ)の神。高い木を神格化したのではないかと言われています。「産巣」とあるように、子孫や動物の繁栄を司るとされていたようです。
 神産巣日(カミムスヒ)の神。タカミムスヒの神と役割は同じですが、女性であったかもしれないと伝えられています。
(コラムニスト 気象予報士 チャーリー)2017-04

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