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『いただきます。ごちそうさま。』

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(絵:そねたあゆみ)

●学校給食で「いただきます」はいうべきではない?
 いまから10年以上前でしょうか? ある学校給食の前に、児童生徒が「いただきます」「ごちそうさま」というのを、やめさせるべきだ」というクレームが、ある親からあり、その理由は
「こっち(親)がお金を払っているんだから、教師の方が「どうぞ食べてください」児童生徒が食べ終わったら、先生の方が「ありがとうございました」と、お礼をいうのが当然ではないか」
 というものであったといいます。これは本当にあった話しなのか、あるいは誰かが作った話しが都市伝説化したのかはわかりません。
 ただ、モンスター・ペアレントが増えてきた昨今、こんなクレームをいう親がいてもおかしくはないということで広まっていったのでしょう。

●「いただきます」「ごちそうさま」の歴史と意味
 本来、「いただきます」というのは、神様やあるいは貴人から、物を下されたときに両手で品物を目の高さより上に押し頂き「はは~、ありがたき幸せにございます。謹んでいただきまする」と、うやうやしく品物をいただくことから始まったとされています。
 それが食事前に「いただきます」となったのは、学校教育がはじまってから。おそらく大正時代か昭和の初期あたりに学校でお弁当を食べるときに、食べ物に関わってくれたすべての人たち、食べ物を与えてくれた神様に感謝の意をしめすために、「いただきます」「ごちそうさま」をいうようになったようです。それが戦後になってさらに徹底していったと考えるのが良さそうです。
 そして「ごちそうさま」は、漢字で書くと「ご馳走様」
 馳走とは、走り回ること。これが、客が来た時に、美味しいものを食べさせたいと、いろいろなところを走り回って、食べ物を持ってきて「おもてなし」をしてくれたという感謝の気持ちから「ごちそうさまでした」となったのです。

●「いただきます」「ごちそうさま」のときに手を合わせる?
 食事の前に「いただきます」をいったり、キリスト教徒ならお祈りをしたすることを、『食事儀礼』といいます。ネットの『Jタウンネット』の調べによりますと、93.8%もの人が、何らかの食事儀礼をしているそうなのです。その調査結果をくわしくいうと・・・
・合掌して「いただきます」という。64.0%
・「いただきます」というが合掌はしない。28.8%
・合掌はするが「いただきます」と言わない。1.0%
・どちらもしない。6.3%
 という具合。全国的に見れば、東北や北海道は食事のときに合掌する人は少なく、その他の地域では「いただきます」「ごちそうさま」のときに合掌する人がかなりいるようですね。
 前述したように、「いただきます」も「ごちそうさま」も、そのときに合掌するしないも。大正時代、戦前戦後の学校教育からと考えられますので、東北や北海道では、学校で「いただきます」「ごちそうさま」は言っても、合掌するということを、あまり教えてなかったのでしょう。
 別に合掌したから礼儀正しく、合掌しないと不信心で作法を心得ていないなんてことはありません。

●海外では「いただきます」っていうの?
 では海外では、「いただきます」というのでしょうか? 映画などを観ると、食事の前にお祈りをしてから、お父さんが「さあ、食べよう」と合図を送るシーンなんかがありますね。
 欧米では「良い食事を」とか「召し上がれ」といった言葉はありますが、「いただきます」といった感謝の気持ちとはちょっと違うようです。合図ですね。
 イスラムの人たちは「神の名のもとに食事をはじめます」といった意味のことをいうそうです。
中国では「いただきます」「ごちそうさま」に類する言葉はありません。
 食事儀礼、食文化はそれぞれですから、自分たちの常識や礼儀と違うからって、相手を軽んずるのは、かえってそれが失礼にあたります。気をつけたいですね。

●大切にしたい「いただきます」と「ごちそうさま」
 この記事を読んでいるのは、その多くが日本生まれの日本育ちであることでしょう。
 と、すれば私たちは、海外ではあまりたい「いただきます」「ごちそうさま」という、これから食べる食べ物や食べ終わったとき、その食べ物に関わってくれた人々、大地や空気(いわば神々)への気持ちを大切にしたいと思うのです。
 和食は世界遺産に登録されましたが、その中には「いただきます」や「ごちそうさま」といった感謝の気持ちも入っているのですから。
(文:巨椋修(おぐらおさむ) 食文化研究家)2017-07

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