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「伝導過熱」の危険

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(絵:そねたあゆみ)

 先日、築地場外市場で大規模火災が発生した。火事が発生した半月前に、孫たちと同所を訪れたばかりだったので、よけい驚いた。火元となったラーメン店の従業員によると、出火したと思われる時間の1時間前には火を消していたと言っている。
 失火の原因は「伝導過熱」である可能性が高いという。聞きなれない言葉だが、火そのものが直接火災の原因になったわけではなく、火を使っていた横の壁に熱が伝わり、過熱されて発火したもので、これを、伝導過熱と言うのだそうだ。
 消防の調べで、今回の火災の火元となったガスコンロがあったすぐ横の壁は「炭化していた」ことが確認されている。
 伝導過熱火災が起きる原因とメカニズムは、調理場の壁のように防火のためにステンレスなど金属の板でカバーがしてあっていても壁の素材そのものが木製の板だったりすると、ガスコンロの熱が壁にも伝わり、木材部分に熱がこもっている。長時間・長期にわたってこのような状況が続き、木材に熱が蓄積していくことで、火を使っていなくても木材部分が自然発火してしまうのだという。東京消防庁の発表によると、伝導過熱による火災は、2016年の1年間で21件発生しているという。伝導過熱火災で困るのは、壁の中で火災が起こっているため、煙が外に出にくく、火災報知器が作動しないのも特徴だ。
 伝導過熱による火災の予防には、次のような火の使い方に注意が必要だ。
①伝導過熱は長時間・長期にわたって壁が過熱されて発火する現象なので、壁が熱くなりにくい調理方法を採用する②ビルトインタイプではなく置き型のガスコンロを使用している場合、ガスコンロはなるべく壁から離して置く、壁から離して置くことで、壁と距離ができて熱が伝わりにくくなるのはもちろん、火と壁の間に空気が通りやすくなり、壁に熱がこもるのを防ぐ効果が期待できる③ガスコンロだけでなく、熱くなった鍋やフライパンからの熱で、壁に熱がこもってしまうこともあるので、調理中の鍋やフライパンは、最低でも壁から10センチ、できれば15センチくらい離して使うようにし、壁に熱が伝わらないようにする④大型の鍋で調理する時は壁から遠いコンロを使い、壁に近いコンロは小型鍋専用にするなどの工夫で、壁と鍋の距離をとる⑤鍋と壁の間に空気を通すことも大切な要素なので、調理中は必ず換気扇を回す。
 自然発火は漏電だけでなく、これからは、伝導過熱にも留意が必要だ。
 今回の火災が、築地市場の移転問題にも微妙に影響していくことは否めない。
(ジャーナリスト 井上勝彦)2017-09

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