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ビュッシュ・ド・ノエル

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カラー4ヨーロッパのクリスマス時期は、家族が集うことで生まれる幸福感が漂っています。欧米人はクリスマスに恋人とロマンチックな夜を過ごすことはありません。年に一度、家族だけで厳かに祝う日なのです。逆に正月は友達や恋人とパーティを開く人が多く、日本とは逆な年末の過ごし方です。

クリスマスイブには、フォアグラ、生牡蠣、オマール海老、七面鳥などのごちそうがテーブルを豪華に飾ります。欧米人が食事の中でも愛してやまないのがデザート。特にビュッシュ・ド・ノエルというケーキを食べるのが定番です。日本でも最近ではオシャレなケーキ屋さんで見かける、丸太が横たわったような形のケーキです。

このケーキは、古くはクリスマスイブにその次の年の豊作を祈って太くて固い薪を火にかけた習慣に由来します。薪はじっくりと時間をかけて暖炉の中で燃え続け、年が明ける元旦まで、大勢の家族でにぎわう居間を夜通し暖めたそうです。長い時間燃えれば燃えるほど、翌年は豊作になると信じられていたのです。燃やす前の薪は家長によってワインや塩で清められました。ワインは翌年のブドウの豊作を願って、塩は邪悪なものから身を守るため、という意味があります。薪の準備は日が昇るまでに済ませなければいけない、残った灰は豊作を祈って肥料として畑に蒔く、など様々な言い伝えがあり、ヨーロッパ人の迷信深さが伺えます。

しかし戦後、日常使いのできる暖炉のある家は、少なくなりました。その代わりに登場したのがビュッシュ・ド・ノエル。薪を燃やす代わりに薪型のビュッシュ・ド・ノエルを食べることで、来年の幸運を願うのです。

薄いスポンジ生地をロールケーキ状に巻いて、チョコレート色のバタークリームでデコレーションするのが、ビュッシュ・ド・ノエルの基本レシピ。しかし最近では、アイスクリームをスポンジ生地で包んだ冷たいビュッシュ・ド・ノエルの方が人気があります。こってりした食事のあとにも、ぺろりと食べられるというのがその理由。12月になると、ケーキ屋さんやスーパーのお菓子コーナーだけでなく、冷凍食品コーナーもビュッシュ・ド・ノエル一色になってクリスマス気分がさらに盛り上がります。

(コラムニスト びねくにこ/絵:そねたあゆみ)2012-12

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