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ジャガイモと飢饉の歴史

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1312-1トウモロコシと同じく、歴史を変えた食材として『ジャガイモ』があります。ジャガイモは南米のアンデス山脈あたりが原産地といわれていて、中南米を侵略したスペインからヨーロッパへ伝わったと言われています。

トウモロコシが世界「三大」穀物と言われていますが、さらにジャガイモも加えて世界「四大」穀物とも言われているくらい全世界で食べられるようになりました。

ただし、ヨーロッパに伝わった当初は、あまり良く思われていなかったらしく、ヨーロッパで食用として定着したのは18世紀になってからでした。

その理由は、ジャガイモの姿がそれまでのヨーロッパにはない醜いものと映ったためとも、ジャガイモの芽には毒があるため、あるいは聖書に出ていない食べ物だからとも言われています。

日本にも17世紀には日本に入ってきており、食べられてはいましたが、それほど定着はせず、日本人の食卓に当たり前のように出るようになったのは明治以後のことです。

そんなジャガイモですが、なんといっても芋の切れ箸を「種芋」として土に埋めておくだけで、荒地でも育ってくれるものですからありがたいもの。トウモロコシと同じように「貧民の食べ物」として、ヨーロッパに広がっていきます。

なんといってもジャガイモは、栄養豊富。カンタンに栽培できる。地面の中で育つので、鳥についばまれる被害もない。

ジャガイモはヨーロッパ人を飢餓から救い、また、ジャガイモを食べることで、ヨーロッパ人は飢え死にせず、次々と繁殖することができるようになりました。

と、どうなるか?

飢え死にせずに、ジャガイモを食べて、たくさん子作りをすると人が増えた分だけ、それだけ食料がいる。また、ジャガイモを栽培して食べる。子作りをして人が増える。

と、いうことで、ヨーロッパ人は飢饉がきても、生き残る人が増えていきます。

貧乏人の子沢山は世界共通。人口が爆発的に増えていきます。

ジャガイモのおかげで、貧しい人たちは飢饉がきても、死に絶えることなく、何とか生きながらえ、人口を増やし続けていきました。人口が増え続けても、貧しいながらも何とか食べていけたのも、ジャガイモのおかげです。

しかし、あるとき悲劇が起こります。19世紀に植物の伝染病が、ジャガイモ疫病が、ジャガイモを襲ったのです。しかし、ジャガイモ疫病はヨーロッパの人々にとって、初めての体験であり、なすすべがまったくわかりません。こんなとき、原産国である南米のアンデス山脈の人々は、疫病がきてもいいように、いろいろな種類のジャガイモを植えていました。たとえ、疫病が流行っても、その病気に強い種類は収穫することができるからです。そのような知恵もまだ、ヨーロッパ人は知りませんでした。

全ヨーロッパにジャガイモ疫病による飢饉が起こります。特にイギリスに支配されていたアイルランドは悲惨で、領主はイギリスに住んでいるため、悲劇的な事情をまったく知らず、アイルランドの人々から搾取を続けます。

アイルランドでも、ジャガイモの恩恵を多く受けていてジャガイモが定着するとアイルランドの人口は急激に伸びて行き、ジャガイモが定着していなかった17世紀のアイルランド人口は約100万人程度だったのですが、ジャガイモが入ってくると急速に人口爆発が起こり19世紀半ばには800万人を越えるほどの人口となりました。

アイルランドは貧しい国でしたから、いかにジャガイモが貧しい人々の命を救い、人口増加に貢献したかがわかります。

しかし1845年から1849年にかけてヨーロッパでジャガイモ疫病が大発生し、ジャガイモが壊滅状態になってしまいます。これは食料の多くをジャガイモに依存していたアイルランドの人々にとって餓死を意味することでした。

アイルランド人たちは、バタバタと同朋が餓死していく中、搾取のみをしてなんの保護もしないイギリスに対して大きな憎悪を抱き、それがいまだに残っているアイルランド紛争にも繋がっているといわれています。

アイルランドにおけるジャガイモ飢饉では、100万~150万人が餓死もしくはそれに繋がることで死亡し、約150万~400万人が北米大陸やオーストラリアなどに移民を余儀なくされました。

当時の総人口が800万人以上いた当時のアイルランドの人口を考えるとこれがいかに異常なことであったかがわかるでしょう。

そのためアイルランドの人口は激減し、いまでも19世紀より前の人口に戻っておらず、現在のアイルランド人口は450万人ほどとなっています。

アイルランドにおきたジャガイモ飢饉によって、アメリカに渡った人たちには、アメリカ大統領となったケネディやレーガンのひいおじいさんもいました。ジャガイモはまさに世界の歴史に重大な影響を与えた食べ物でした。

(食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ)/絵:そねたあゆみ)2013-12

 

 

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