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おむすび・おにぎりの歴史

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(絵:吉田たつちか)

●おむすび? おにぎり?
 NHKの朝ドラ「おむすび」がはじまりました。主演は橋本環奈。平成元年生まれのヒロインが、栄養士として、人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”であるそうな。
 さて「おむすび」ですが別の呼び方に「おにぎり」という言い方もあります。これは同じ握り飯を指しているのですが、なぜ呼び方に違いがあるのかは、諸説ありハッキリしたことはわかっていません。
 よく言われることとして、東日本では「おにぎり」、西日本では「おむすび」と言うことが多いようです。
 NHK放送文化研究所の「平成15年度の『ことばのゆれ』全国調査」によると「おにぎり」(89%)、「おむすび」(29%)、「にぎりめし」(13%)となっています。
 また語源の説として「おむすび」はご縁を結ぶという縁起がいい言葉として。
 「おにぎり」は、握り飯という言葉の変化と、鬼を斬るという魔除けの意味をかけて「おにぎり」と呼ぶようになったという説があります。この項では、9割の人が使う「おにぎり」という言葉を使うことにします。

●おにぎりの歴史
 日本に稲作が広がったのが、縄文時代後期の紀元前3千年頃。中国南部から伝わったコメの種類はジャポニカ種という粘り気のあるおコメだったからこそ、日本独特のおにぎりが誕生したと考えられています。
 奈良時代に書かれた『常陸国風土記』には「握飯(にぎりいい)」の記述が残っており、平安時代になると、貴族が集まったとき従者にもち米をおにぎりにしたものを振舞っていたようです。
 やがておにぎりは、合戦時の兵糧として、農民は農作業中の食事として、平和な江戸時代になると、旅人の弁当として日本中で愛されるようになります。

●日本初の駅弁もおにぎり
 日本初の「駅弁」もおにぎりでした。1885年(明治18年)7月16日、日本鉄道から依頼を受けて「白木屋」という旅館が販売した駅弁です。 この日に開業した日本鉄道宇都宮駅で「おにぎり2個、たくあん2切れを竹の皮に包んだもの」を発売したのが最初とされています。 他にも1889年(明治22年)、姫路駅で発売した「幕の内駅弁当」が日本初の駅弁とする説もあります。どちらが最初か論争は横に置いておいて、「幕の内弁当」もまたおにぎりと関係があるのです。
 幕の内弁当は江戸時代の後期、お芝居の休憩時間に食べる弁当として始まりましたが、これは弁当箱に、ゴマを振った俵型のおにぎりにカマボコや卵焼きなどのおかずを詰めたものだったのです。
 その名残で、いまの幕の内弁当のごはんに、おにぎりの俵型を模した形にゴマを振っているものが多いのです。

●全国に三角のおにぎりが広がったのはコンビニがきっかけ
 そしておにぎりの形ですが、いまでこそ三角のおにぎりは全国どこででも見ることができます。でも元々は丸形が主流でした。 地域別では関東だと三角、関西は俵型、東北は円盤型が多く見られました。
 いまでは一般的な三角形のおにぎりが全国に広がったのは、1974年に東京・豊洲の『セブンイレブン』1号店でおにぎりをお店に置くようになったことにはじまります。
 最初はほとんど売れなかったようですが、食べる直前にパリパリの海苔を巻けるようにした包装スタイルを採用することで、コンビニおにぎりが大ヒット。セブンイレブンが全国にチェーン展開をすることで、三角おにぎりも全国に広がっていきます。
 そしてコンビニおにぎりのヒットで、これまで「おにぎりは家で握って食べるもの」という常識が「買うもの」に変化したのです。これは食文化の変化の一種と言えるでしょう。
 ちなみにおにぎりに付きものの海苔ですが、関東では焼きのりが主流、関西では味付け海苔が主流です。 この味付け海苔ですが、明治になってから東京で生まれたものなのです。それがいまでは関西で主流なんて、ちょっとおもしろいですね。(巨椋修(おぐらおさむ):食文化研究家)2024-11

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