おもしろコラム通信4月号 2013.04.01 No.108

 

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吉田松陰を育てた母が説く風呂の効用

幕末の思想家・吉田松陰について私が強く印象に残った話があります。

 松陰の生家は、松陰の母が嫁いでくる以前は極貧の中にあったそうで、何故そうなったかというと、松陰の祖父が異常なほどの本好きで江戸詰め時代も家族への仕送りなどそっちのけで給料の殆どを本の購入にあて、そのまま持って帰国したところ、火事で膨大な本の山は家ごと焼けてしまい、以来祖父は茫然自失のままとなり、一家は辛うじて糊口を凌ぐのが精一杯の状態になってしまった・・・と。

 そんな中へ、松陰の母、タキが嫁いできたそうで、この女性は、根っから陽性の人であり、彼女ならば赤貧にあえぐ杉家に明るい空気を持ち込んでくれるに違いない・・・と見込まれての嫁入りだったそうです。

 ところが、タキはこの極貧の杉家へ入ると、まず、何をやったか。

 何と!毎日、風呂に入ることを宣言したそうです。こういうと、若い方は失笑されるかもしれませんが、思えば当家も私が子供の頃には水道こそありましたが、お湯は薪で焚いてましたよ。(まあ、商売柄材木の切れ端には困らなかったということもあるのでしょうが。)ましてや、江戸期は、蛇口を廻すどころか、井戸からつるべで何杯、何十杯と汲み上げては風呂桶に移し、それから火を起こし(ライターどころかマッチも無い時代です。)、薪をくべ・・・の時代です。

 従って、当時は何人もの使用人を抱える大身の家以外、それなりの武家屋敷ですら、入浴は数日おきが普通だったそうです。

 当然、初めは周囲も分不相応と反対したそうですが、タキは、その重労働は「すべて自分がやる」ということで説得し事実、後に(松陰ら)子供達が成長して手伝い始めるまで、すべてを一人でやった・・・と。

この辺のタキの心情は、永冨明郎著「武蔵野留魂禄 -吉田松陰を紀行する-」という本によると、「貧しくとも風呂ひとつで心が温まり、翌日への意欲が沸くならばとの思いがあった。貧すれば心までもが貧しくなっていき、更に寒さは一層気持ちを萎えさせる」・・・ということだったそうですが、この話は私も少し思い当たる事があります。

 

私も以前、ある会社の営業をやっていた時代があるのですが、成績が上がらなくなってくると、人間、声が小さくなるもののようで、そうなると、また不思議に成績が悪くなる・・・。

だから、売り上げが悪い時期が続いていても、気が付く限り、大きな声を出さなければならない・・・わけで、まさしく、「辛いときほど声を出せ!」でしょう。

人間というものは、自分で起こした勢いというものに、自分も巻き込まれるような面があるのかもしれません。

タキは息子松陰が「安政の大獄」で非業の死を遂げて後も生き続け、明治23年に84歳の大往生を遂げたそうですが、この点を、同書も、「心身ともに健康な人であったに違いない」と結んでありましたが、なるほどと・・・思わせられるものがあるような気がします。

 (小説家 池田平太郎/絵:そねたあゆみ)

 

 

 

日本人と桜

深々と積もった雪もすっかり溶け、暖かな日差しが大地を照らすようになってきました。どんなに冬が長くても、春は確実にやってくるのです。今年も日本列島の南の方から桜の開花の便りが届きました。

 桜の木の寿命はどれくらいなのでしょうか。日本三大桜と呼ばれる桜があります。山梨県実相寺の神代桜と岐阜県本巣市の薄墨桜、福島県田村郡の三春滝桜です。その樹齢に驚かされます。なんと、神代桜は二千年、薄墨桜は千五百年、三春滝桜は千年と推定されているのです。これほど長く生きているのですから、大正時代に国の天然記念物に指定されました。美しい花を咲かせながら移り変わる日本の歴史を見守ってきたのですね。

 毎年、日本人は桜の花見を楽しみにしています。この習慣も相当昔から行なわれてきました。平安時代初期に即位された嵯峨天皇が花見を行なったという記録があります。平安貴族はさぞかし優雅に満開の桜を観賞し、ヒラヒラと散る花びらに風情を感じたことでしょう。室町時代には一休宗純僧侶が、「花は桜、人は武士、柱は桧、魚は鯛、小袖はもみじ、花はみよしの」と明言を残しました。それぞれ一番優れているものを挙げているのですが、花にいたっては桜が一番で、美しく咲き誇る地は美吉野(現:奈良県吉野地方)と評価しています。一休宗純僧侶が桜の美しさに陶酔した様子が思い浮かべられます。きっと、多くの人々が日本のあちらこちらで桜を見て感動したのでしょうね。

 さて、そのように古来より咲く桜にたくましさを感じますが、本当はとてもデリケートな植物なのです。

 特に現在私たちが観賞しているソメイヨシノですが、この品種は江戸時代に作られたもので、寿命は日本三大桜のように長くはありません。たったの六十年ほどと言われ、たくましくはないのです。よって、花見の最中に一本枝を家に持ち帰ろうとポキッと折ってはいけません。そこから腐敗が進み、翌年以降に花が咲かなくなることがあるのです。ビニールシートを敷く時も、根元から少し離れた位置が望ましいです。根を踏みつけると傷んでしまい、やはり木が腐る原因になってしまうからです。

 桜は毎年見たいもの。この気持ちは昔も今も変わりありません。そして、私たちの子孫もきっとそうでしょう。そのために、一本でも多くの桜が長く咲き続けられるよう、花見のマナーを守る必要があります。

(コラムニスト 愛川いつき/絵:そねたあゆみ)

 

 

日本料理を圧迫し続けた武士階級

世界の名のある料理というのは、その多くが支配階級の舌や胃袋を満足させるために発達してきたものがほとんどです。

 しかしなぜか日本の支配者たちは、あまり日本料理の発達に貢献していないのです。

 お公家さんたちが贅を尽くして楽しむという料理はやがて廃れてしまいましたし、だいたい江戸時代になるとそのお公家さんたちは極貧にあえいでいる状態で、帝でさえ「腐った魚を食べさせられている」とまで言われたくらいでした。

 いっぽうの現実的に日本を支配していた武士はというと、日本料理の発達に手を貸したというより、むしろ、庶民たちが豪奢な料理を楽しもうとすると“倹約令”などというものを発行して、料理を圧迫する方が多かったのです。

 なんといっても武士は食わねど高楊枝、武士たる者質実剛健でなければならぬというのがタテマエ。

 名君と言われる将軍や大名は、徳川吉宗や上杉鷹山など、とにかく質実にして倹約を奨励する人たちばかりで、少しでも贅沢をする将軍や大名はバカ殿呼ばわりでした。

 もっとも、武士が質実剛健であるべきというのはタテマエで、ある程度余裕のある武士は、結構享楽に通していたものです。

 元禄時代を生きた尾張藩の御畳奉行である朝日文左衛門という人は筆まめな人で、膨大な日記を書き残しているのですが、その多くが日々食べたり飲んだりしたことを書き残しています。

 ある程度裕福であれば、武士は3日に1回だけ出仕すればいいだけのことで、お城に行っても大した仕事があるわけではなく、同僚とお弁当を自慢しあったり、昼間からお酒を飲んだりしていたことが記録されています。

 しかしそのような武士もいましたが、武士全体を見てみると、決して庶民に比べて特に裕福というわけでもありませんでした。

 江戸時代の武士の平均所得を調べてみると、中の上程度の農民所得と同じくらいで、ほとんどの武士は内職をしないと武士の体面が保てないどころか、食べていけなかったほどです。

 ある大名が家臣と城内で話しをするとき

「きょうは、体調が優れないので座布団を使うのを許してくれ」と、たかだか座布団すらも遠慮しながら使ったという逸話が残っているくらいです。

 いっぽう、ヨーロッパや中国の支配者階級は、贅を尽くすことが美徳であり、とにかく贅沢をすればするほど、すごい王様ということになります。

(食文化研究家 巨椋修/絵:そねたあゆみ)

 

 

 

少エネ調理鍋

2011年3月11日に発生した東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故にともなう、電気料金、ガス料金の値上げが続いています。さらに、2012年8月10日に消費税増税法案が国会で成立し、2014年4月1日に5%から8%、2015年10月1日に8%から10%と、2回にわたって消費税増税が行われます。

 このような中、日本にむかしからある保温調理法が少エネの観点から見直されています。保温調理法とは、従来の温度より低い温度で加熱し、素材にストレスかけずに火を入れる調理法です。80度くらいが、もっとも味が染み込む適温とされています。

 食文化研究家の魚柄仁之助氏によると、日本古来からある調理法のひとつで、半煮調理した鍋を毛布で包んで保温しておけば、味がしみこんで調理が完成するといいます。毛布などで包むのが面倒な向きには保温調理カバーなるものもありますが、コタツの時期にはコタツの中に30分ほど入れておけばOKです。

 保温調理用鍋もいくつか販売されていますが、私は「はかせなべ」というものを買い求めて使っています。早稲田大学名誉教授の小林寛博士が考案したので、そう命名されたそうで、ひと煮立ちしたら、なべを火から下ろしてしばらく放置するだけ。例えばカレーの場合なら、沸騰後3分加熱し、外蓋をして火から下ろし平らな場所で30分保温。これだけで美味しいカレーの出来上がります。色々、試してみたが、煮物には確かに便利でガス代もセーブできます。

 同じような原理化と思うが、長谷製陶の「かまどさん」も重宝しています。蒸気が上がったら火を止めて、そのまま少し置くと、おいしいご飯が炊き上がる。こちらは圧力釜の原理も兼ね備えているようで、炊き上がる時間が早いので便利、我が家では、電気釜がなくなってしまいました。

 水が貴重なモロッコで産まれたダジン鍋は、水を使わないで、弱い火で、野菜などを蒸し焼きにする鍋で、野菜本来のうまみが味わえます。

 圧力釜も加え、少エネ便利鍋が色々とあるようなので、少エネ調理に挑戦することをオススメします。

(家庭料理研究家 古屋麻耶/絵:そねたあゆみ)

 

 

老化と成長ホルモンの働き

大豆は健脳食と言われ、頭の働き、記憶力を向上させたりボケ防止にも役立つ食品です。

 大豆レシチン中の、GPC・・・グリセロホスホコリンには、成長ホルモンの分泌を促進することが知られています。成長ホルモンは、人間の多くのホルモンをコントロールするマスターホルモンで、老化は成長ホルモンの枯渇から始まると言われます。成長ホルモンは、思春期をピークにその後は急速に減少し、30~50代で50%、60代で30%に低下することが知られておりなるべくこの分泌を高めるような養生が、老化を促進するか否かの境目でもあります。

 成長ホルモンの分泌が良くなると

1,筋肉量が増え、足腰が丈夫になる

2,基礎代謝が増加し、脂肪が分解され、贅肉がとれる

3,傷の修復が促進

4,脳の働きが高まり、記憶力、集中力が増す

5,皮膚の代謝が促進され、肌の艶と張りを高める

6,インスリンの分泌が促進され、血糖値が安定

7,女性ホルモンの分泌が促進される

等の効果があります。

 日本古来からの伝統食・・・味噌汁、納豆、豆腐、湯葉、高野豆腐などの大豆製品を1日1度は召し上がると良いですね。

 現在のご長寿さんが、元気で長生きしておられるのは、ひとつにはこのような食事の影響ではないでしょうか?

 現代人は、朝食をパンとコーヒー、サラダ、ハムエッグ、ヨーグルトなどの洋食を好まれるようですが、なるべく和食を取り入れられ、洋食は週に2度程度にとどめておかれてはいかがでしょうか?

頭と体がうんと喜びますよ♪

(薬剤師、薬食同源アドバイザー 高田理恵/絵:そねたあゆみ)

 

 

<編集後記>

・先月の投稿総数=13本

・ブログ=http://blog.goo.ne.jp/tebra/

CATEGORY=おもしろコラム

 

 

 

 

 

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4月号の原稿締め切りは4月10日です。

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