おもしろコラム通信9月号 2011.0901 No.089

 

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おもしろコラム通信発行月の前月によせられたコラムの内、採用されたものを絵入りで掲載しています。

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健康食品は本当に効くのか!?

 健康食品は本当に効くのかとよく聞かれることがありますが、なかなか難しい問題です。そもそも健康食品の役割として病気の治療よりも病気にならないような体作りであったりもするわけですから、その効用を検証するというのはなかなか困難な作業です。

 厚生労働省は薬事法を盾に取り、健康食品が病気に効くとか病気が治るという表現を使わないよう強く指導しています。例えば「糖尿病の方に向いている食品です」というような特定の病気に効果がある(かもしれない)ことを暗示することさえもいけないということになっています。唯一の例外が、特定保健用食品(トクホ)なのですがこれも医薬品ではないので治療効果を表現することも特定の病名を挙げることも許されてはいません。許されているのは、「血糖値の気になる方(=糖尿病の方を暗示)に適した食品」、「血圧の気になる方(=高血圧の方を暗示)に適した食品」というような靴の上から痒いところを掻くような表現までです。

 そこで、健康食品業界では各健康食品素材の研究成果をメディアに流し、間接的にその食材が何に効くのか広報していくという手段がとられています。

 しかし、注意をしなければいけないのが、それらの研究成果の証拠レベルがどれほどのものかということです。医学的な証拠のレベルには大まかに言って3段階があります。一番基礎的なレベルとして、インビトロ(in vitro=試験管内での実験)次にインビボ(in vivo=生体内での実験、動物実験)、そして最後にヒト試験(臨床試験)ということになります。

 なぜ、最初からヒト試験をして効くか効かないのか白黒つけないのかというと、安全性の問題もありますが、何と言っても費用対効果の問題です。

 インビトロの実験というのは、本来メカニズムを研究したりスクリーニング(=ふるいにかけること。つまり、たくさんの素材の中から有用なものを選び出すことです)のために行われるものです。例えば、ある医薬品が血圧を下げる効果があったとすると、医薬品の登録申請の際には、その医薬品はいったいどのようなメカニズムで血圧を下げているのか作用機序を明らかにしておかなければならないのですが血管拡張する効果(血管が拡張すると血圧は下がります)があるのか、それとも血圧を上げるホルモンの働きを抑制するのかといったようなそれぞれの作用する場所で起る反応を試験管の中で再現してメカニズムを調べています。

 ここで注意が必要なのですが、インビトロの実験成果は実は余り当てにはなりません。どういうことかと言いますと、インビトロの試験結果で有効であっても実際に薬物や食品を口にすると、消化・吸収の過程を経るので、消化の段階で有効成分が分解したり、吸収率が悪くて有効な量が吸収されないということがよく起るからです。

 これに対し、インビボの動物実験はある程度信頼性があると言えます。実際に、生きた動物の体内で消化・吸収の過程を経た上でも効果があったわけですから、人間においても効果を発揮することがかなり期待できます。しかし、動物実験においてもいくつか注意しなければならない点があります。

 まず、経口投与の実験であるかどうかということです。動物実験では、胃の中へ直接投与する経口投与の他に、お腹や皮下に注射する腹腔内投与や皮下投与などの方法があります。経口投与は誤って気管に入るなどの事故もあるために熟練が必要である上、作業効率も悪いので、腹腔内投与や皮下投与の方がよく実験に用いられる傾向にあります。しかし、医薬品ではない健康食品が注射で使用されることはなく、消化・吸収の段階を経ていないそれらの投与方法では実際に食べて効くかどうかという証明にはなっていないのです。

 さらに、動物実験には「種差」があるということも気をつけなければいけません。投与する物質と動物の種類によっては、人間と代謝が異なる場合があり、動物では有効であっても人間には効果がなかったり、逆に動物実験では効果がなくても人間では効果を発揮するということがあります。

 以上まとめますと、信頼できる健康食品を選ぶには、理想的にはヒト試験のデータまで揃ったものが好ましいのですが、①「インビボの動物実験」であり、しかも②「経口投与の実験である」という二つのポイントを満たしたデータを揃えているか否かということを指標にされるとよいのではないでしょうか。

 (医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永/絵:吉田あゆみ)

 

 

風邪を治す特効薬?

 医療現場では「風邪・水虫・癌をそれぞれ完全に治す方法を発見すれば間違いなくノーベル医学賞がとれる」とまことしやかに囁かれます。特にここで風邪といえば、誰もが幾度となく体験するありふれた病気であるにも関わらず、これを治すことができればノーベル賞がとれるとは一体どういうことなのでしょうか。

 実際には「ノーベル医学賞がとれる」というのは、風邪を完全に治すことがそれだけ難しいことを意味する、医者仲間の冗談のようなものです。いわゆる「風邪」とは、専門的には「風邪症候群」と呼ばれ、その名前が示す通り、せき・鼻水などの局所症状と熱・頭痛など全身症状を示す、無数の病気の総称なのです。

 風邪の原因はほとんどがウイルス、一部が細菌の感染によるものです。原因と疑われているウイルスは二百種類以上あり、それぞれの種類にさらに数百種類の型が発見されています。そのため一口に風邪と言っても数万もの原因が考えられるのです。これではウイルスの特定が困難で、ワクチンを作ることは事実上不可能です。

 現場では医師の多くが解熱剤や咳止めなど、風邪の症状を和らげる薬を処方します。しかし、人体において病原体と戦う白血球は熱のある状態でこそ働きが良く、せきは病原体を排出しようとする自然な働きです。つまり、風邪の症状を和らげようとするほど、人体が病原体と戦う免疫力が下がってしまうのです。

最近では医師もビタミンCや栄養剤を処方して、本来人体に備わっている免疫力を強くすることで、風邪を治そうとすることが多くなっています。民間療法で風邪に効果があるとされる卵酒は栄養たっぷりで、果物にはビタミンCが含まれています。昔の人は免疫力が風邪を治すのだということに気がついていたのかも知れません。

風邪を治す特効薬が見つかったとしても、それは風邪を治すことしかできないでしょう。さらなる研究が待たれるのは、どんな病原体とも戦うことができて、古来から人体に備わっている免疫力の働きです。

免疫力の研究が進めば、風邪だけでなくしつこい水虫、そして多くの人が未だに苦しむ癌でさえも、完全に治せるかも知れませんね。

(現役医大生 朽木誠一郎/絵:吉田あゆみ)

 

 

秋口の病と養生  

 今年の夏は未だかつて無い猛暑が続きました。9月に入っても残暑が厳しく、体に堪えます。秋口に多い病と養生は次の4つです。

1,肺の弱りによる症状(太陰肺経、陽明大腸経)

 暑さで熟睡できない日が続いたり、毎日大量の汗をかいたことでからだの大切な体液は大幅に消耗しています。肺は乾燥をきらうため、夏の終わりの肺はとても弱っています。肺の気が弱ると元気がなくなり、声が小さくなったり、しゃべるのもおっくうになります。さらには、乾燥した空咳が出る、喘息の発作が出る、風邪をすぐにひいてしまう、アレルギー(くしゃみ、鼻水等)が出る・・・・などの症状に見舞われがちになります。

★小麦よりもお米、山芋、ジャガイモ、栗、キャベツ、干し椎茸牛肉、鶏肉などで、気力を補いましょう★梨、りんご、ビワ、銀耳、松の実、豚肉、鴨肉、ほたて、昆布海藻などで肺を潤しましょう★漢方のお勧めは生脈紅景天や、亀齢寿、 通竅、ツバメの巣などです

2,血管系の症状(少陽三焦経、厥陰心包経)

 汗とともに大量のミネラルも失っているため、のぼせ、ほてり眩暈などの自律神経症状も出やすくなります。血液が濃くなっているため、明け方の脳梗塞にも注意が必要です。

★シホヨモギでミネラルバランスを立て直しましょう★寝る前の飲酒は脱水を引き起こすので危険です、水分補給を忘れずに!

★脳系が心配な方はカギカズラや田七で通りをよくしよう

3,脾の弱りによる精神症状(太陰脾経、厥陰肝経、少陰心経、任脈、陽明胃経)

 夏場に冷たい水分を摂りすぎて、すっかり食欲を無くし、胃腸が弱ってしまった方は心血、肝血の不足により気持ちが塞いで、クヨクヨと考え込みがちになります。ちょっとしたことがストレスになってしまい、落ち込んだりイライラしやすくなります。パニック発作や眩暈発作、プチ鬱になりやすいのもこのためです。生理不順になったり、出血がダラダラと続くこともあります。

★人参、ほうれん草、落花生、葡萄、ライチ、プルーン、イカ、タコ、豚レバーなど養血の食材を取り入れましょう

★大熊柳で脾を立て直し、子羊袋や天蘭美人で強力に血を補ってあげましょう

4,痛みの症状(太陽膀胱経、少陽胆経、督脈、太陽小腸経、少陰腎経)

 体力消耗により、衛気が弱っていると毛穴から寒邪が入り込み容易に風邪をひく、頭痛、肩こり、背中の痛み、腰痛、関節痛などを起こします。汗をかいた体でクーラーに当たったりするのはもってのほか!全身が冷えて体が凍り付いてしまいます。

★汗をかいたらこまめに着替えましょう

★シャワーですまさず、必ず湯船につかりましょう

★松康泉で流れを良くして温めましょう

      ( )内は関係する経絡です

(薬剤師、薬食同源アドバイザー 高田理恵/絵:吉田あゆみ)

 

彼岸花・相思花

 川岸にぎっしりと咲く彼岸花。秋の観光名所となり、毎年カメラを持参した人々でにぎわう様子がニュースで報道されています。一般的に彼岸花と言えば真っ赤な花が思い浮かびますが、色の種類としては白や黄もあり、赤い彼岸花とは違った趣をかもしだしています。

 しかし、なかには彼岸花を不気味と感じる人もいらっしゃるのではないでしょうか。それもそのはず、彼岸花はよく墓地に咲いています。よって死のイメージと結びつけられます。なぜ、彼岸花はよく墓地で見られるのでしょう。その理由は、昔は土葬だったことに関係しています。過去、墓はネズミや狐などの小動物に荒らされることがありました。その対策に使われたのが彼岸花。彼岸花には毒があり、その毒で爪や口を使って掘り起こす小動物たちを殺そうとしたのです。

よって、墓を守るために積極的に植えられました。火葬となった今でも彼岸花の根は絶えることなく、そして毎年自然に開花し、あちらこちらで赤々と咲き続けているのです。

 彼岸花の名の由来も死のイメージと結びつけられます。開花は九月中旬。それがちょうどお彼岸の頃なので彼岸花と名づけられました。お彼岸、イコール墓参りですからどうしても死のイメージがぬぐえませんね。

 このような悪いイメージを嫌って、彼岸花ではなく曼珠沙華という別名を使ってイベントが開催される場合があります。ちなみに曼珠沙華とは元々は仏教の世界の言葉であり、それを見た者はおのずと悪事から離れて改心するという素晴らしい天上の花のことを意味していました。その花の色は白だったのですが、現在では色は関係なく赤や黄でも曼珠沙華と呼んでいます。

 韓国では、花が枯れた後に葉がでる性質を男女の恋愛に例え、『会えなくともお互いを慕い合う相思花』と呼んでいます。所変われば良いイメージが持たれる花なのに、日本では悪いイメージが定着してしまって、ちょっとかわいそうかもしれませんね。

 (小説家 華山 姜純/絵:吉田あゆみ)

 

 

王の中の王

 一般に広大な国土と多様な民族を抱える国は民主制よりも独裁制の方が適していると言われます。帝政ロシア然り、ソビエト連邦然り、アメリカ合衆国でも大統領制であり、古代ローマでも国土が広大になってからは共和制から帝政へと移行しています。

 先日、DVDで「キング・オブ・キングス」というナポレオンの生涯を描いた映画を見たのですが、その中でナポレオンが皇帝に即位するとき、マルコビッチ扮する宰相タレーランがナポレオンに向かって言う言葉があります。

「ひとつ問題がある。国王(王政)と皇帝(帝政)はどう違うか・・・だ。」

ナポレオンは、わずかに詰まった後、即座に、「皇帝は選挙によって選ばれる。古代ローマの皇帝がそうであったようにだ!」と答えました。

 フランス革命の余韻くすぶる中とは言え、何とも画期的な・・・と言うよりもまさしく革命的なナポレオンの皇帝観だと思います。これが、この後のフランスにおける「皇帝」と「国王」というものへの概念の違いとなっていったようで、実際、ナポレオン没落後、再度、フランス皇帝の座に着くナポレオンの甥、ナポレオン三世は選挙を経て元首の地位についた後、クーデターによって皇帝になるという経緯を経ています。

 これに限らず、彼ら欧米人の背景にはいつもギリシャ・ローマというものがあるようですが、このナポレオンの考えを導き出し、先例として周囲をも納得させた古代ローマの皇帝もまた、選挙で選ばれた訳ではないにしても元老院という議会があり、必ずしも専制君主だったわけではないようです。(元老院で余りにも攻撃される初代皇帝アウグストゥスに対し、彼の家族が憤慨したところ、アウグストゥスは「彼らの攻撃が言論であるうちは我慢するしかない。言論に寄らなくなると剣になる。」と言ったといいます。)現代日本人の感覚から言うと、皇帝というよりはむしろ、「世襲される大統領制」といったところだったでしょうか・・・。

 この点で、古代ローマとほぼ同時期に成立した古代中国の皇帝というものは、乱立した「王」を力で平定した後に「王を凌ぐ存在」として制定されたもので、まさしく「王の中の王」、キング・オブ・キングスという意味であり、この点で、同じ皇帝と訳されていても西洋と東洋とでは、まるで概念が違うようです。

 そう考えれば、近代の西洋社会における皇帝とは中国における皇帝よりも、ローマ教皇と天皇という皇帝の権力を承認する超越的存在があったという意味では、むしろ、日本の征夷大将軍・・・つまり、「将軍」の方が感覚的には近かったのかもしれません。

(小説家 池田平太郎/絵:吉田あゆみ)

 

<編集後記>

・先月の投稿総数=15本

・ブログ=http://blog.goo.ne.jp/tebra/

CATEGORY=おもしろコラム

 

 

<読後通信簿

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10月号の原稿締め切りは9月15日です。

*特に季節を織り込んだコラムについては、翌月を想定して投稿ください。

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