おもしろコラム通信7月号 2012.7.01 No.099

 

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りんごの唄にみる詩人の凄み

 

 「戦後」と言えば、「りんごの唄」ということは私のような「戦争を知らない子供たち」どころか、「戦争を知っている子供たちの子供たち」のような世代でも耳にしていますから、やはり当時を生きた人々にとっては、紛れもない「歴史」だったのでしょう・・・。

 作詞を担当した詩人、サトウハチロー氏について。

私にとって、この人は、早くから、子供の頃によく耳にした童謡「ちいさい秋みつけた」の作者として、認識しておりましたが、近年、そんな哀感溢れる詩を作る割には、派手な・・・を通り越して、破天荒な私生活で有名な人であったとも聞きました。(まあ、親父の佐藤紅緑も、口論の挙げ句、料亭に火を付けたりなんてエピソードがあったくらいですからねぇ。)

 その氏が作詞した、この「りんごの唄」ですが、元々は、軍歌として作られた物だったとか。軍部の「音楽は軍需品である。」・・・という意向の元、軍歌として作ったものの軍の検閲によって「軟弱である!」として却下され、以来、ずっと氏の手許で暖められていたもので、それが、戦後、「敗戦にうちひしがれた国民を励ましたい」という意向の元で、映画「そよかぜ」の上映に向け、その主題歌の作詞を依頼された氏が、「国民を元気づけるのは詩人の義務だ」と言って傍らから出してきたのが、この詩だということでした。

 この「りんごの唄」って、確かに、曲調は確かに明るい、はずんだ歌でしょうが、歌詞だけをみたときには、割と普通の情景です。この詩のどこに「明るく励ます、元気づける・・・」なんて部分があるというのか・・・。

「赤いリンゴに 口びるよせて だまってみている 青い空 リンゴはなんにも 云わないけれど リンゴの気持ちは よくわかる リンゴ可愛や 可愛やリンゴ」・・・って、特別なことはどこにもないし、一言も、「頑張れ!」とか「負けるな!」、「立ち上がれ!」なんてのは出てきませんよね。

 でも、現実に、この歌は、肝心の映画が霞んでしまうほどに、当時の人々の心を魅了し、多くの人に歌われ、活力を与え、そして、愛されたわけですから、本当に、日本中、津々浦々で口ずさまれた歌だったのでしょうが、そこまで人々の心を捉えたほどの歌でありながら歌詞は何の変哲もない淡々とした情景・・・。

 ただ、その一方で、この「りんごの唄」の歌詞を、こと、軍歌として見た場合には、何となく、意図していたところがわからないでもないような気がしますね。リリーマルレーンの日本版と言ったところでしょうか・・・。

 この歌を歌った歌手・並木路子さんが、レコーディングの時に戦時中の辛い体験を思い出して、どうしてもうまく歌えず、作曲家の万城目 正氏から、「上野へ行ってきなさい」と言われ出かけていくと、大人ばかりか、年端もいかない孤児たちまでもが働いており、彼女がそのうちのひとり、靴磨きの少年に「僕、いくつ?」と尋ねたところ、「母ちゃん、いなくなっちゃったからわかんない」と答えた・・・と。

 文字通り、年端もいかない子供までをも、こんなところに追い込んだ連中には、毎度の事ながら、本当に憤りを感じますが、この詩の意図したところの意味は当時を生きてない私なんぞには、所詮、わからないのかもしれません・・・・。

 その意味では、彼の師である、西条八十が、失意の中にあったときに、満を持して書いた、日本初の童謡「かなりあ」の歌詞は凄いですよね。

 出だしが、「歌を忘れたカナリアは 後ろの山に棄てましょか」ですからね。今だったら、動物愛護団体や教育委員会が目を血走らせて阻止に廻るんじゃないですか?でも、これはまだ良い方で、二番は、「背戸の小薮に埋けましょか」で三番は「柳の鞭でぶちましょか」ですよ。棄てるのはまだしも、生き埋めや、ムチ打ちの刑は、まずいんじゃないですかぁ・・・。

 もちろん、詩人の言わんとするところは、そのあとに、すべて「いえいえ それはかわいそう」とか、「いえいえ それはなりませぬ」などと否定することで、子供の持つ残酷性というカミソリを柔らかく制し最後に、「歌を忘れたカナリアは 象牙の舟に銀のかい 月夜の海に浮かべれば 忘れた歌を思い出す」

という美麗の句に繋げるわけですから、西条八十という手練れの並々ならぬ技量と、同時に、乾坤一擲の想いが見て取れるような気がします。

 もっとも、これって、八十自身、詩人としては、不遇期にあったがゆえに、渾身の力を込め得たのかもしれませんけどね。

(小説家 池田平太郎/絵:吉田たつちか)

 

 

 

7月のこよみ

 

 7月の二十四節季にはまず、小暑(しょうしょ 7月7日)があります。これを3つに分けた七十二候は、初候「あたたかい風が吹いてくる」、次候「蓮の花が開き始める」、末候「鷹のひなが飛び始める」となります。

 次に大暑(たいしょ 7月22日)。この七十二候は、初候「桐が実り始める、次候「土が湿り蒸し暑くなる」、末候「時々大雨が降る」になります。

 またこの時期にスーパーなどが大騒ぎするのが、土用です。今年は7月19日が土用の入り、そして、スーパーのメインイベント「土用の丑」は27日になります。しかし

「土用」とは、この時期にだけあるのではないこと、ご存じでしょうか? 二十四節季などの暦というのは、中国から伝えられたものです。中国には「五行(ごぎょう)思想」というものがあります。「木火土金水(もっかどごんすい)」。聞いたことはありませんか? それぞれ同じ順に、色ならば「青紅黄白黒(玄)」季節ならば「春夏秋冬」。「青春」とか、詩人として有名な北原白秋の名前は、これに由来しています。すると、「土」「黄」に当たる季節が足りないのです。そこで中国の暦では、季節が変わる前の18日間をそれぞれ「春の土用」などとして、五行思想と足並みをそろえたのです。今年も、7月19日から18日を足した翌日の8月7日は、もう立秋。暦の上では秋になるのです。しかしなぜ特に夏の土用だけが一般に広まっているかというと、この時期は梅雨が明けて夏の暑さが本格的になってくるため、「うなぎを食べて気合いを入れよう!」という意味合いもあるのかもしれません。歳時記にも「土用」や「土用うなぎ」は夏の季語になっていますが、ほかの季節の土用も、意識してあげてもらいたいです。

 7月と言うと、季語にもありますが、「梅雨」ですね。「雷」や「虹」、「夕立」も夏の季語です。雷や虹は条件によれば一年中見られる現象なんですけどね。

「夕立」は、梅雨が明けた真夏に多いです。地上で暖められた空気が上昇し、その時周りの空気との気温差が生じ、積乱雲(入道雲)を発生させます。それが降らせるのが「夕立」です。空気にもこれだけのプロセスがあるので、雨が激しく降るのは午後だったり夕方だったりするのです。

 夏と言えば高校野球と思われる方も多いと思いますが、甲子園球場は海と山が近い位置にあるため、積乱雲が発達するのにものすごく適した地形だと言えます。

(気象予報士 チャーリー/絵:吉田たつちか)

 

 

健康にいい植物オイルの使い方/選び方

 

 必須脂肪酸が豊富、そして栄養価が高いことで、様々な植物オイルがブームとなっています。ただし、植物オイルは酸化しやすいので取り扱いに注意が必要です。油は気温の上昇や加熱によって酸化すると、ニオイや風味が悪くなり、栄養価が低下するだけでなく、人体に害を及ぼすこともあるのです。正しい使い方を知っておくと便利です。

 悪玉コレステロールを低下させるオレイン酸が豊富なオリーブ油は、熱に強く酸化しにくいので、加熱調理をしても身体に悪影響を及ぼすことはありません。イタリア料理などのパスタソースにたっぷり使うとまろやかになりますね。また、加熱せずに生のままで使えば、オリーブの風味が楽しめる上に、豊富なビタミン

AとEを体内に取り入れことができます。

 オリーブ油を日常的に摂取している地中海沿岸では、心臓病にかかる率が低く、長寿が多いと言われています。彼らは食用だけでなく、赤ちゃんの皮膚トラブルや、髪や肌の美容のためにもオリーブオイルを使用します。いずれにせよ効果を得るには、果実をそのまま絞った高品質のエキストラバージンオリーブオイルを使用することが重要です。

 フラックスシード油(亜麻仁油)は、麻の実から抽出されるオイルで、ω3脂肪酸となるαリノール酸が豊富です。その特徴から、癌治療の研究にも使われています。

 酸化しやすいので開封後は冷蔵庫で保管し、なるべく早く使い切ることが大事です。市販されているサプリメントを摂取するのが最も簡単で安心です。

 美容の面では、ウチワサボテンの種子から採れるサボテンオイルに注目したいところ。肌細胞の再生化と水分補給を促進するので、エイジングによる肌のトラブルに悩む女性にお勧めです。肌がふっくらとなめらかになり、シミやしわなどの欠点がカバーされます。難点は、抽出されるオイルの収穫高が低く希少なため価格が高いこと。しかし逆に言えば、格安のサボテンオイルは他のオイルとブレンドされていたり、品質の低いものだと疑えます。だまされることなく、本当にいいものを選びたいですね。

(コラムニスト びねくにこ)

 

 

 

食器を手にもつのは世界的にはめずらしい

 

 日本人はごはんを食べるとき、茶碗やお椀、丼などを左手にもって食べるのですが、韓国では「乞食食い」といってタブーとなっています。

 中国では、ごはん茶碗は手に持ってOKですが、その他はマナー違反。麺類などはレンゲを使います。

 おなじお箸文化の国なのに、ずいぶんと違いがあります。韓国が茶碗やお椀を手に持たないのは、それらの食器が金属でできているため熱くて持てないんですね。金属製だから重いし。

 中国も韓国も、箸とスプーン(・レンゲなど)の両方を使いますが、日本の場合はほとんど箸だけを使って食事をします。

 日本の箸文化は、中国や韓国から渡ってきたものでですが、日本の米は粘り気がありスプーンですくうよりも箸ですくったほうがやりやすかったことなどから、スプーンは廃れ、茶碗やお椀は手で持つようになったのではないかと言われています。

 また味噌汁やお吸い物のようなスープもスプーンで使うのではなく、お椀から直接口をつけて“すする”という技術を使って飲みました。

 この“すする”という行為は意外と高等技術を要するものであるらしく、すすることで熱い飲み物を冷ましながら口に入れているのですが、この習慣がない外国人にはなかなかできないことのようです。逆にいうと“すする”という高等テクニックを身につけてしまった日本人は、コーヒーなど欧米から入ってきた熱い飲み物も、よほど気をつけないとついついすすってしまいます。

 ある人が外国人に

「どうしたら、熱い飲み物をすすらないで飲めるのか?」と聞いたところ、「日本人はせっかちだ。我々は冷めるまでゆっくり待つ」

 と、言われてしまったそうです。

(食文化研究家 巨椋修<おぐらおさむ>/絵:吉田たつちか)

 

 

こどもをお客さんにしてしまうのは誰?

 

 「ねーえ、ちょっと味がうすいんだけどー」

はい、居酒屋さんでのおじさんの発声ではありません。ここは子ども会主催のバーベーキュー大会。

 オトナがテント設営したり、U字工に炭を起こしたりしている間子どもたちは野球&サッカー&バスケットで大盛り上がりしていました。おなかぺこぺこにしてから、バーベキューを思う存分楽しんでもらおうと言う、親心です。

 なかなかに良い天気、子どもたちはきゃーきゃー大騒ぎ。その間親もあれやこれやと準備に大騒ぎ。一時間ほど汗を流して、いよいよバーベキュー。子どもたちは30人近く、ずらりとテーブルに並びました。

 お父さんたち、次々と肉を焼く肉を焼く肉を焼く!!お母さんたちおにぎり握る握る握る!!!子どもたち狂喜して食べる食べる食べる!!!

みんな汗だくです。

 そして、冒頭の一言。小学四年生のかわいい女の子。「ねーえーちょっと」と、忙しく立ち働くお母さんの一人を捕まえ、「味がうすいんだけどー」この言葉もさることながら、態度もビッグサイズ。完全に自分はお客様モードなんですね。立ち上がる気配すらなし。

 そのお母さんは「あー、はいはい、焼肉のたれを持ってくるから待っててね」と両手に山盛りの焼きそばをふるまいつつ、答えました。

 私は思わず、「味がうすいなら、自分でたれをかけていらっしゃい!!」と叫んでしまいました。ちょっとびっくりした顔のお嬢さんでしたが、「はーい」と返事してぴょんと立ち上がり、たれを取りに行きました。

 そうなんですねえ、悪気はないのです。ただ、自分が何をするべきなのかが分からないだけなのです。余計なことをして怒られるより、親に聞いた方がいい。

 これは大人も悪いと思います。バーベキュー大会をするのは素敵なアイディアです。が、机やいすの用意やテント設営、下ごしらえから肉を焼いて配ってやることまで、親がすべてするものなのでしょうか。

 子どもがお米を研いで、キャベツを刻み、箸や皿を配り、ちょっと熱い思いをしながら肉を自分で焼く方がたぶん、楽しい。そして親の分まで食事の用意させてやって、親から「ありがとう!! あなたが焼いてくれたお肉、とても美味しいよ」と、お礼の言葉をもらう。もちろん、楽しい時間の後は、きちんと片づけまでがんばらせる。ここまでできたらいいなあ、と思うのです。

 何もかもお膳立てをしてやることは、安全だし、段取りもしやすい。だけど、こどもから、大事なチャンスを奪っている様な気がするのです。

 実際子どもに何もかもまかせようとすると、事故も怪我も失敗もケンカもするので、そっちのが何倍も大変なんですよね。

 子ども会主催のイベントで、火傷などしようものなら責任問題にもなりかねません。だから、実際は難しい。だけど子どもを「お客さん」にしてしまっていいのかな、と私は少し心配になります。

 消費者としての立場が普通であって、生産者になれない。提供されることに慣れてしまって、自分から動くことが難しい。

 用意された結末のゲーム、正解がある問題、ゴールがある授業、

結果が見えるテスト、に慣れてしまって、何もない空間は苦手。

だって、何をすればいいのか分からないから。子どもたちから、自由を楽しむ力を奪ってはいないかな。

 バーベキューの後片付けをしながら、そんなことを思いました。

(コラムニスト 中川奈々子/絵:吉田たつちか)

 

 

<編集後記>

・先月の投稿総数=14本

・ブログ=http://blog.goo.ne.jp/tebra/

CATEGORY=おもしろコラム

 

 

 

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