最近では、男性女性を問わず、1人暮らしの独身者がたった1人で鍋を食べる“1人鍋”が、よく食されていると聞きます。
と、いってもこれは別に新しいことではなく、江戸時代から“1人鍋”は、独身者に愛用されていたのです。
地方から参勤交代で江戸に単身赴任してきた武士たちは、毎回外食ができるほど裕福な人は少なく、自炊をしていました。
そのときに味方になってくれたのが鍋料理。
なんといっても鍋料理は、昆布やカツオ節などでダシをとりながら野菜や魚をぶった切って鍋に放り込めば、それでOK。
味は味噌、醤油などで味を調えるもよし。ポン酢醤油などで食べるもよしの超カンタン料理であったりします。
よって、江戸時代では、武士も庶民も独身者・単身者は鍋をつついていたのです。
武士の場合、高級武士であれば下男などがいて炊事をしてくれましたが、下男下女がいなかったり、雇えない者は自炊。下級武士となれば数人で相部屋でしたので、炊事当番を決めて料理をしていたようです。
こういった仲間を「同じ釜の飯を食った仲間」というのでしょうが同時に「同じ鍋をつついた仲間」と言ってもいいのでしょうね。
時代が現代になり、火鉢や七輪が使われなくなってからも、ガスコンロ、電気コンロ、近年にいたってはカセットコンロが普及しており鍋料理は日本人に愛され、いまでは1人鍋用の調理器具まで販売されるようになっています。
っていうか、筆者であるわたしも1人用の「小型グリル鍋」を愛用して「一人鍋」を楽しんでるし。
夜1人で1人鍋をしていてもさみしくないし。全然さみしくないし・・・・・・・。
(食文化研究家 巨椋修/絵:そねたあゆみ)2013-08