秋の夜、東の空の高い所に大きな四角形(平行四辺形)を描く星々を見ることができます。これらは「秋の大四辺形」とか「ペガススの大四辺形」と呼ばれます。その名のとおりこの平行四辺形は、ペガスス座の胴体部分を現わしています。
ペガススはギリシア神話では、勇者ペルセウスが怪物メドゥーサの首を斬り落としたとき、そこから垂れた血が地面に浸み込み、そこから生まれた翼の生えた馬、天馬です。天馬とは言われるものの、星座になったのは上半身だけで、しかも逆さまになった姿です。ペガススが星座になったいきさつを、ギリシア神話から紹介します。
コリント国にはベレロフォンという王子がいました。彼の容姿は美しく、運動にも優れ、人柄も良く人望を集めていました。あるとき彼は、ルキア国の王さまから、怪物キマイラの退治を命じられます。キマイラというのは、当時ルキアの国を荒らして国民を困らせていた動物で、頭はライオン、胴体はやぎ、しっぽはヘビという姿をし、怒ると口から炎を噴き出しました。困ったベレロフォンは女神アテナの神殿に行きました。そこで彼は天馬ペガススを使えば良いという神託を受けます。彼はペガススをすぐに思うままに操ることができるようになり、キマイラ退治に向かいました。ベレロフォンはキマイラと対峙するとすぐ、炎を噴きかけられますが、アテナに守られているおかげでペガススとともに逃げ切ることができました。ベレロフォンはキマイラに矢を放ちます。10本目で、キマイラは息絶えました。
ルキア王の元へ戻ったベレロフォンは、喜んだ王から、王女の1人を妻にしてもらい、ルキアの国王になりました。それからもベレロフォンはいくつもの冒険に成功しました。そうするうちに神々を崇めない人間へと変わって行きました。
ついには神々の仲間に入れてもらおうと思い立ち、ペガススに乗って神々の国オリンポスへと飛び立ちました。それを知った大神ゼウスは激しく憤りました。ゼウスは1匹のアブを放ち、ペガススの耳を刺させました。ペガススは痛みのあまり上昇することを忘れて暴れ回り、ベレロフォンを地上へ振り落としました。ペガススは暴れた末に天にぶつかったため、今のように不自然な姿で星座になったのだと言われています。
(コラムニスト 気象予報士 チャーリー)2016-11