(文:コラムニスト 気象予報士 チャーリー/絵:そねたあゆみ)2016-12
冬の夜空、南のほうに、大きな平行四辺形を形づくる星々があります。これを「ペガススの大四辺形」と呼ぶのですが、そこからさらに南に視線を移した位置に、ぽつんと2等星がきらめいています。それはくじら座のしっぽに当たる星です。ギリシア神話のくじらは、大きく裂けた口を持ち、歯や爪は鋭く、2本の腕を備えた獰猛な姿として描かれています。くじら座は全天の星座の中で4番目に大きく、頭の部分はお誕生日の星座でもあるおうし座のすぐ西にまで届きます。
ペルセウスとアンドロメダのお話をご存じでしょうか? ペルセウスは大神ゼウスとアルゴス国の王女ダナエとの間に生まれた勇者です。髪の毛が蛇でできていて、それを見た者は石になってしまうと伝えられている、メデューサを退治したことで有名です。このペルセウスがメデューサの首を持ってエチオピア国を通りかかったとき、岩に縛りつけられていたのがアンドロメダでした。
アンドロメダはエチオピア国のケフェウス王とカシオペア王妃のあいだに生まれた王女でした。アンドロメダの美しさを、母のカシオペアがあまありにも自慢しすぎたために、海の妖精たちを怒らせてしまいました。その話が海神ポセイドンの耳に届きました。ポセイドンは激しく憤り、「人間たちを懲らしめてやる!」と言いました。
そこでエチオピア国に遣わされたのが、くじら座の元となるお化けくじらのティアマトでした。ティアマトはエチオピア国の人々を次々に襲いました。
エチオピア国のケフェウス王が神さまにお伺いを立てると、「娘のアンドロメダをいけにえにせよ」とのご神託が下りました。そして、いけにえとしてアンドロメダが岩にくくりつけられて、今にもティアマトの餌食にされようかというところへ、メデューサの首を持ったペルセウスが現われたのです。
ペルセウスは即座にメデューサの首をティアマトの前に差し出しました。するととたんに、あれほど暴れていたティアマトが、その場で石に姿を変え、海底深くに沈んでしまいました。このティアマトが天に昇り、くじら座になったと言われています。