冬のちょうど頭の真上に、明るい白い星とオレンジ色の星が並んでいるのを見ることができます。これはお誕生日の星座にもなっているふたご座の一等星です。白い星をカストル、オレンジ色の星をポルックスと呼びます。
カストルとポルックスは、大神ゼウスが白鳥の姿に変身して誘惑した人間の女性レダが生み落とした卵から現れました。ちなみにこの二人の妹のヘレネは、のちにトロイア戦争の原因になった絶世の美女です。
カストルは馬の名手、ポルックスは武術にすぐれていました。彼らはとても仲が良く、いつも一緒に過ごしていました。あるとき戦いに加わることになり、二人は船に乗り込みました。その船は暴風雨に巻き込まれ転覆しそうになります。それを見かねた神オルフェウスは、得意の竪琴で嵐を鎮めるとともに、二つの明るい星を空に灯しました。それがのちにふたご座の一等星になるのですが、このようないきさつで現れた星々なので、後世までこの二つの星は航海士たちの守護神とされてきました。
その戦いで、カストルは死んでしまいます。カストルは、母である人間の血が濃く、ポルックスは父である神の血が濃かったので永遠の命を持っていたのだそうです。
元々仲の良かった双子だったので、遺されたポルックスはひどく嘆きました。ポルックスは、自分の父親でもあるゼウスに、「自分を身代わりにしてください」と祈りました。ゼウスは、一日交代でどちらかが地上で暮らし、どちらかが天上で過ごすよう計らいました。
これには異説もあり、ポルックスの悲しみに打たれ、ゼウスはこのときに二人を並べて星座にすることで、兄弟姉妹の友愛を空から伝えようとしたのだとも言われています。
毎年12月13日をピークに前後の1週間、ふたご座の方向から流星群が現れます。風邪をひかないように友愛の願いをかけてみてはいかがでしょうか。
(気象予報士・小説家 チャーリー/絵:吉田たつちか)
2009.12