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改革は目で見せるに限る 

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(絵:吉田たつちか)

「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ」とは映画「踊る大捜査線」の中での織田裕二くんの名台詞ですが、同様に、よく、「現場の意見が採り入れられない」とか「現場が一番わかってる」、「現場に負担が」などという声を耳にしますよね。でも、中世の博多や堺などの商人は貿易船への投資をする際に、敢えて、現場から遠く離れたところに本店を置いたという話があります。

 これは、一見すると、最前線からの生の情報が耳に入らなくなり、判断を誤ることになるような気がするので、不利なようにも思えるのですが、一方で、現場に近い所に居ると、その分だけ、現場の熱気や情実などに左右され、冷静な判断ができなくなる可能性があります。

 確かに、現場の連中の頑張りを見ていれば、「これはもう採算とれないよな」と思っても、なかなか、「はい、ここで打ち切り!」とは言い出せないもの。戦前のロサンゼルスオリンピック開催前の選手選考の際、かつての日本水泳界のエース高石勝男はピークを過ぎており、選考責任者は「高石には主将の任を託すも、選手としては出場させない」旨を宣告したといいます。これに対し、高石のこれまでの水泳界への貢献や努力を知る若手選手や監督は、「高石に有終の美を飾らせてあげて欲しい」と執拗に懇願するも、選考責任者は頑なに却下。理由は、「高石ではメダルを取れない」と。この決定は、オリンピックというものの性質を考えれば、当然の判断だったろうと思います。オリンピックは国民の税金を使って出場するものである以上、水泳界という「身内の自己満足」のためにあるわけではないからです。

 で、元警察官僚の佐々淳行氏の著を読んでいると、とかく、現場の目線で是非を判断しがちなんですよ。これは、「現場が一番実情をわかっている」という意味では、確かに、一見、当を得たことのように思えますが、よくよく考えてみれば、現場の声に引きずられた結果が、泥沼の日中戦争だったわけで。(男の本質は子供です。ナイフ一本持っただけで、自分が強くなったと勘違いするもの。ましてや、最新鋭超ド級戦艦・・・なんて持たされたら、誰だって使ってみたくなるでしょう。)

 私は、常々、氏の考えには共感すると共に、近視眼的なものを感じていたのですが、氏は歴代総理の指南役と言われた昭和の偉人・安岡正篤から「方面の騎」、つまり、現場指揮官こそ適任だと言われたと言います。やはり、指摘した人はいたんですね。(裏返して言えば、現場指揮官止まりということ。)結局、彼のような人は、後藤田正晴のような名伯楽がいてナンボなんでしょうね。

(小説家 池田平太郎)2019-10

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