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桜散る免許返納1万歩

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(絵:吉田たつちか)

 後期高齢者入りを目前に、免許証の書き換え通知が届いた。3年前に車を手放したものの免許証はそのまま保持して、時々はレンタカーを借りてドライブを楽しんでいた。

 娘たちからは、万一事故を起こしたら賠償能力がないのだからと、免許返上を強く求められていた。今回、継続するか否かをなやんでいたが結果として、返上することに決めた。一抹の寂しさはあるが、一種の安堵感もあった。これまで、車対車の接触事故はあったものの人を怪我させたり、殺めたことがなかったことは幸いであった。

 田舎暮しでは、車を保持していないと、何かと不便ではあるが、タクシー代が1割り引きとなるので、得した気分になる。駅から坂道を登って我が家にたどりつくのは、健康に良いとはいえ、しんどい。荷物がある時や遠くから帰って来た時、雨降りの時、飲み屋からの帰りは、タクシー利用となるが、それでも、車の維持費よりはよっぽど安い。

 もう少し待てば、自動運転車の世の中になると期待するご同輩もいるが、生きているうちにそうなるか疑問だ。

 東京では、後期高齢者は都営の乗り物が電車でもバスでも地下鉄でもタダだといって、姉は東京中を移動しているらしいが、市町村の予算が年々厳しくなっている田舎では、タダにはならない。

 免許証返上したもう一つの理由は、最近物忘れがひどくなったことである。物を取りに階下に降りたはいいが、何を取りに来たのか忘れることがある。目的の途中で他のことをやると、決まって本来の用事を忘れて戻る。階段の上り下りもいい運動になるとうそぶいてはいるがやや心配にはなる。

 免許証返上のために伊東駅から伊東警察署まで、そして、宇佐美駅から自宅までの往復でちょうど1万歩を歩いた。思えは、府中での免許書き換えの時期はいつも桜が満開であった。

”桜散る免許返納1万歩”(勝爺)

(ジャーナリスト 井上勝彦)2020-04

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