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ボケ防止と暗証番号

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(絵:吉田たつちか)

 田舎のスナックはママも高齢だがお客も高齢だ。介護施設とスナックのやっていることに大きな違いはない。とはいえ、スナックには高齢者施設のような国の援助はない。
 そのため、出入り禁止になる人も少なからずいる。むやみに人に絡む人、他人の悪口をいう人、便所を汚す人、そしてツケをする人などだ。
 最近、出入り禁止されたAさんは、誰彼かまわず、昔の自慢話(自分が少年野球の監督をしていた時代の話)ややたらと出身大学の話をしたり、最近未亡人になった婦人(高齢者)にスマホの電話番号を教えろと強要したり、「今度遊びにいってもいいか」と聞く。
 しかも、毎回同じ話を性懲りもなく繰り返す。少年野球監督時代の話は、同じ時代を共生していた地元の人にしか分からないし、わずか4年いた大学の話など、人生70年~80年のスケールにはほとんど無関係だ。漁師としてあるいは職人として60年~70年やってきた人の話なら傾聴に値するが・・・・・。
 同じ話を何度もすると聞くと、他人ごとではない。娘のところに行った時など、娘は、「その話はもう100回も聞いた」と最後まで話させてくれない。
 最近、ネットサーフィンやアプリを開いたり、銀行口座、クレジットカードを使う際にスマホを介した2段階認証が必須となってきた。暗証番号は複雑で長いものが自動で発行され、パソコンやスマホに自動記憶されるが、スマホに届く2段階認証は4桁~8桁の数字が要求される。これを毎日のように行っていて、煩わしいと感じていたが、待てよ、この操作はボケ防止に役立つのではないかと気づいた。要求された番号を紙に記すのではなく、暗証し、そのまま入力するのだ。
 それにしても、出禁となったAさん、猛暑の中で一人家に閉じこもったままではボケから認知症になりはしまいかと、少し、心配になってきた。
(ジャーナリスト 井上勝彦)2022-09

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