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酒は飲まねばめでたい

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(絵:吉田たつちか)

 ある人に、「アメリカのトランプ大統領の頭には終身大統領になることしかない」と言ったら、「トランプは高齢だ。そんな先のことまで考えなくていい」と言われたので、2025年、中国・北京の天安門広場での軍事パレードの際、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が「150歳まで生きられる」と話していたということを引き合いに出し、「今は150歳まで生きられる時代ですよ」と言ったところ、「プーチンや習近平と違い、不摂生ばかりしてきたトランプはそんなに長くは生きられない」と言われた。
 この方の言う「不摂生」が具体的に何を意味しているのかはわからないが、ただ、トランプ大統領は酒を飲まないそうである。一次政権の頃、トランプ大統領夫妻と、当時の安倍晋三首相夫妻とが会食した際、安倍首相もトランプ夫妻も酒を飲まないのに、安倍首相夫人の昭恵さんだけがグラスをクイクイ空けていたので、外務省職員が焦ったという話がある。
 果たして、トランプ大統領が「飲めないのか」、それとも、「飲まないのか」は知らないが、ただ、彼自身は若くして、仲が良かった兄をアルコール中毒で亡くしているという事実がある。資産家であった父からのプレッシャーに耐えきれなかった結果だというが、この点で想起するのが毛利元就。幼くして父母に死に別れた元就は、兄と二人きりとなったが、兄は過酷な戦場体験、年若い主君の指示を軽んじ、従おうとしない家来たち・・・といったプレッシャーに耐えきれなかったのか、兄は酒に逃げ場を見出したようで、酒害で若死にしている。
 毛利家は兄に限らず、代々、酒害によって命を縮めてきたようで、元就はこれを振り返り、「我が父、祖父、兄、皆酒害の為に早世した。祖父は33歳、父は39歳、兄は24歳であった。自分は下戸であったが故に長生きできた。酒を飲まねば長生きも出来、まことに目出度き限りである」とまるで酒に理解がない人らしい、取り付く島もない言い方で子孫に酒を戒めた。元就自身は、当時としては長命の74歳まで生きたが、長男隆元は40歳で死去。家督は代わって、孫の輝元が継いだが、元就は酒を嗜むこの孫にうるさいくらい「酒を飲むな」と訓戒した。ただ、戒められた輝元はその後も酒をやめることも無く、祖父に準ずる72歳まで生きた。泉下の元就も苦い顔であったろう。
 ちなみに、豊臣秀吉の甥、小早川隆景は、当初は秀吉の後継者と目されていたことから、幼少の頃から酒宴で接待されることが多く、有名な関ヶ原合戦での裏切り当時は、若年ながら、もうかなりアルコール中毒が進んでいたとか。果たして、正常な判断ができる状態だったのか疑問である。 
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