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割り箸にみる穢れの思想

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12-06-2 「割り箸」は、日本独特といってもいい食文化の一つです。

最近になってこそエコブームとかで、大衆食堂などで割り箸ではなく塗り箸を出す店が多くなりましたが、いまでも日本料理店にいくと割り箸が基本です。

日本人には、箸や茶碗を神聖視する宗教心が潜在的にあるらしく、割り箸のような過去だれも使ったことのない食器を“清いもの”と感じる心があるようなのです。

そして一度使用した箸には霊が宿ると感じ、その箸を誰かが使ったり、そのまま捨てて動物のおもちゃになどならぬように折ってしまうという習慣もあります。

みなさんの中にも、お弁当の割り箸をなんとなく折る人もいることでしょう。なぜと言われても困ると思うのですが、日本人に古くから伝わる箸への信仰心の名残りなのです。

箸信仰は日本の全国にあり、ストーリーは次のようなものです。

旅人が峠を越える前に食事をした。当時、箸はその場にあった木の枝などを削って作るため、食事が終わると捨ててしまうものだが、一度使った箸は霊が宿るためそのままにしておくと禍(わざわい)が自分に来るかも知れないと考え、神に納めて禍を防いでもらおうと考えた。

あるいは山で削って作った箸は魂が宿るので、そのまま捨てると後で動物たちがその箸で遊んだりしたら自分に禍がやってくるおそれがあるため、遊べないように折って捨てた。

などという話しがあります。他にも割り箸を使用後に折るのは自分の霊が宿った箸をそのままにしておくと他人に使われたとき自分の魂が穢(けが)れることをおそれての行為と思われます。

箸と同様に自分の口をつける茶碗なども家族でそれぞれ自分用のものがあるのですが、これも同様の理由で他人が口をつけると穢れるという隠れた信仰心から出たものなのでしょう。

日本人は無宗教と思われがちですが、こんなところに宗教心があるとは、ほとんど気が付いていないのでしょうね。(笑)

割り箸は江戸時代後期に出てきたものですが、まだ誰も使っていない清潔な箸を、使い捨てにするというものが、日本人の“穢れ”の信仰心と合致して広まっていったのでしょう。

(食文化研究家 巨椋修<おぐらおさむ>/絵:吉田たつちか)2012-06

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