秋に入り、ナシの美味しい季節になりましたね。
ナシは比較的地味な果物ですけれども、いくつかの健康機能をもっています。今回はナシの効用について紹介致します。
まず、栄養成分の紹介の前に、「ナシ」という名前についてですが、語源については諸説あるようです。一例を挙げさせていただきますと、江戸時代の学者新井白石は中心部ほど酸味が強いことから、「中酸(なす)」が転じたものであるとしています。
この一風変わった名前の「ナシ」は、忌み言葉「無し」に通じることから、家の庭に植えることを避けるという風習がある一方、鬼門の方角にナシを植えることで「鬼門無し」として、むしろ積極的に利用されることもあるようです。ものは、考えようですね。
さて、栄養成分についてですが、ナシにはソルビトールという甘味成分が多く含まれています。ソルビトールは、糖アルコールというものに分類される特殊な糖分ですが、水に溶けるとき熱を吸収する作用があります。よく、ガムなどに配合されていて、ソルビトール入りのガムを口に入れたときにとスーッと清涼感がするのは、ソルビトールの吸熱反応によるものです。
また、ソルビトールは低カロリーかつ虫歯になり難いという特長があります。さらに、ソルビトールには炎症を抑える働きもあり、民間療法としてナシはのどの炎症に効くとされています。
ナシには、特有のシャリシャリした食感がありますが、これは果肉に含まれる「石細胞」とよばれるものが原因です。石細胞は、リグニンとペントザンと呼ばれる食物繊維で出来ています。なお、前述のソルビトールは下剤としての働きも持っていて、食物繊維とソルビトールのダブルの効果でナシは便通改善効果の期待できる食品です。
また、ナシに多く含まれているアスパラギン酸には疲労回復効果、カリウムには血圧を下げる働きが期待されています。
(医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永/絵:吉田たつちか)
2010-09