UA-77435066-1

重症アレルギーには要注意

 | 

1110-2 毎年、秋口になるとスズメバチの個体数が最大となると共に凶暴化し、人を襲うという事件が多発します。痛ましいことに中には死にいたるという場合もあります。多くの方は、スズメバチは人を殺すほど強い猛毒をもっているんだと思われるかも知れません。しかし、亡くなられる方はよほどの大群に何箇所も刺された場合を除き、スズメバチの毒そのものによって死亡するというわけではありません。実はアレルギー反応によって死に至っているのです。不幸にも亡くなられる方というのは過去にスズメバチに刺されたことがあり免疫反応によって体内に抗体ができている方です。抗体のできた方が、2回目以降にハチに刺されると抗原抗体反応すなわちアレルギー反応が起ります。その結果、刺されたところが大きく腫れ上がったりすることになります。ところが、体質によっては単なる腫れでは治まらず、稀に重症化してアナフィラキシーショックと呼ばれる危険な状態に陥ることがあります。その場合、急激な血圧の低下や呼吸困難などが起こり、即座に適切な治療が行われなければ最悪の事態、死に至ることになります。人里離れた森林で作業されるような方のために、取り敢えず危険な状態から脱することのできるエピペンと呼ばれる自分で注射することのできるお薬も現在では開発されています。

このアナフィラキシーショックは、食べ物によっても起ることがあります。日本では、そばが有名ですが、欧米ではピーナッツが有名です。このアナフィラキシーショックはごく微量でも起る可能性があります。そばの例では、そばのゆで汁で茹でたうどんによって起ったという例やピーナツの例では、キスした相手がたまたまピーナッツ製品を食べた後だっというだけでも発症したことがあると言われています。

アレルギーの発症メカニズムとして高分子量のものでないと起らないという特徴があることから、ほとんどの場合、たんぱく質によってアレルギーは起ります。そして、頻度の違いはありますが、食品として口に入る全てのたんぱく質で起る可能性があります。また、どの食品で起るのかは個人差がとても大きく、人によっては、全く起こさないという人もいれば、あるひとは、複数の食品で起きるということもあります。さらに、毎回かならず発症するということでもなく、その日の体調などによって発症したり、しなかったりということもあるようです。

注意を要するのは、加工食品です。例えば、ハンバーグのつなぎなどに卵とか牛乳が使われていても外見上はわからないので、卵アレルギーや牛乳アレルギーの人が気づかずに摂取してアレルギーを起こすということがあります。そこで、厚生労働省ではこうした事故を防ぐため、アレルギーを起こす頻度が高い食材やアナフィラキシーショックを起こしやすい食材を指定して、それらを使用した食品のパッケージには表示することを義務付けています。指定された食材は、「特定原材料」と呼ばれていて、以下の7品目があります。

えび、かに、小麦、そば、卵、乳(乳製品)、落花生

この7品目の他にも、「特定原材料に準ずるもの」として、表示することが望ましいとされるものには以下の18品目が挙げられています。

あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、ゼラチン、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご

これらの食材にアレルギーをお持ちの方は、パッケージに表示されている原材料を確認すれば、意図せぬ摂取を避けることができます。

健康食品を摂取した際に、不快な症状が出た場合には、アレルギー反応の可能性があることをまずお考えください。日頃、日常生活で摂取しているような食品は、アレルギーをもっているかどうかがすでにわかっているので避けることができますが初めて食べるものに対しては、自分がアレルギーをもっているのかどうかは事前にはわかりません。寒気がしたり、発疹が出たり、あるいは顔がパンパンに腫れ上がるなどの予兆がある場合もありますが、急速に危険な状態に陥ることもあります。特に、喘息をお持ちの方は、危険な状態に陥りやすいと言われていますので、おかしいと思ったらまず病院に行くことをお勧めします。また、喘息の方の場合、遅発型喘息反応という現象があり、一度症状が治まった後も、6~10時間後に再度呼吸困難が発生することもありますので、食物アレルギーによって呼吸困難が出現した場合には、病院で適切な治療を受けるべきです。

重症アレルギーの発症頻度は、とても低いものですので、多くの方はそれほど恐れる必要はないのかもしれませんが、アレルギー体質の方や喘息をお持ちの方は、是非ご注意ください。

(医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永/絵:そねたあゆみ)

2011-10

コメントを残す