一年中海に沈むことのないおおぐま座とこぐま座。この二つの有名な星座が海に身を隠すことができないのには、とても悲しい理由があるのです。
ギリシア神話の大神ゼウスがまた人間の美女カリストに浮気をしました。当然ゼウスの正妻ヘラはそれを許しません。ヘラは夫の心を奪った罰として、カリストを人よりもはるかに大きな熊に変えてしまいました。人の心が残っていて、自分の身に起きた悲劇をいくら嘆いても、それは恐ろしい熊のおたけびにしかなりません。カリストは人目を避けて森へ逃げ込みました。
それから何年かしたある日のこと、カリストを狙う狩人の青年と出会いました。それはなんと、カリストとゼウスのあいだに生まれた息子の成長した姿だったのです。カリストは自分が熊の姿をしていることも忘れ、青年を抱きしめようと思い近寄りましたが、青年にはそれが母だとは思いもよりません。当然のように、向かってくる熊に槍を突きたてようとしました。
それを、間一髪、ゼウスもさすがに見かね、息子を小熊の姿に変えました。ゼウスはヘラがカリストを熊にしてしまったことにも長年悔いを感じていたので、二人がもう決して離れることのないように、おおぐま座、こぐま座として天上に置いたのでした。
しかしヘラは、自分がカリストを熊にしたことが彼女たちが天へ上がってくる結果を招いてしまった上に、天でも一番目に付くところに置かれたことに対して腹の虫が治まらず、海の神々に頼んで、この二つの星座が決して海に沈まないようにしてくれと頼みました。ヘラは、カリストが海に隠れたあいだにまたゼウスと親しくなるのではと嫉妬したのです。
だからこの二つの星座が海に沈むことはないのです。
(気象予報士 チャーリー/絵:吉田たつちか)2009-07