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うまい!TKG

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  娘一家が5年ぶりにアメリカから日本に帰ってきた。

今やお金さえ出せば、アメリカの都会では、日本の食材はほとんど買い求めることが出来る。帰国早々、娘達が食べに行ったのは牛丼屋である。日本の大手牛丼屋チェーンの一部もすでにアメリカに進出しているが、生卵の有る無しが違う。

ほとんどの外国では卵を生食する習慣がない。面白いもので卵の賞味期限もアメリカと日本では異なる。日本が2週間であるのに対し、アメリカでは3週間である。これは生食の有無と気候の差からくるようだ。

先日、テレビで、究極の卵がけご飯の食べ方というのをある大手卵メーカーの研究者が紹介していた。彼女曰く、温かいご飯に、まず、割った生卵の白身だけを入れてよくかき混ぜる。ご飯の熱で白身が細かく泡だってご飯とからんできたら、次に取りおいた黄身を入れてまぜると、黄身と白身とご飯がうまい具合に混ざり合うのだ。

私も早速やってみた。これまでの卵がけご飯とは一味違う美味さだ。卵には私なりのこだわりがある。ストレスのない環境(放し飼い)で、野菜や草、ミミズなどを主として食べている鶏から生まれた卵だ。最近の高級卵は、やれ黄身の色が濃いだの、爪楊枝を刺しても倒れないなど邪道がまかり通っているが、放し飼いの黄身は特別な色をしていなくて、ごく普通であり、黄身も時として割り出すと崩れてしまうこともある。狭いゲージで機械の一部のように飼われた鶏の卵との違いは薄皮に顕著だ。殻と白身の間にある薄皮が自然卵のものは強靭である。そして、毎日食べていると気付かないが、たまに、スーパーの安い卵を食べると食味(ニオイ)が悪い気がする。

一昔前までは、どの家庭でも、小さな鳥小屋を作り、毎日、生みたての卵を採って食べていたものだが、今では、よほど山間部にでもいかなければ、鶏の鳴き声がうるさいといって近所から顰蹙をかうことになる。

牛丼といえば、吉野家が最近、肉を熟成させて使っているとのニュースがあった。牛肉は適正な温度で寝かせると、時間とともにタンパク質が分解され、うまみ成分であるアミノ酸に変化していく。そしてペプチドという成分が増えることで牛肉の酸味が抑制され、まろやかになる。これまで吉野家は、冷凍していた肉を解凍、スライスし、調理するまでに経過する期間を熟成期間としていたが、現在は、従来よりも約2週間早く冷凍から冷蔵に移行し、熟成期間を延長することで更にうまみが増し、肉の食感も向上したおいしい牛丼の提供が可能となったと、HPではリリースしているが、私の近所の吉野家には、そのことをアピールしたポスターもチラシもまだ、見当たらなかった。

2歳まで日本いて、5年間アメリカにいた上の孫は、生卵が食べれなくなっているとのこと。本当に美味い卵を持っていって、日本人の原風景のひとつでもある卵がけご飯(TKG)を再び好きにさせてやろうと思っている。

(ジャーナリスト 井上勝彦/絵:そねたあゆみ)2014-07

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