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幸せのおにぎり

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07-07-1つい最近、私が住んでいる町のメインストリートを歩 いていると、いつものように何人かのホームレスに遭遇した。彼らはいつも、「Give me money or food」と書かれたダンボールの切れ端を自分のひざの上に置き、通り行く人々を眺めている。お腹がすいているのか、生きる気力がないのか、トロンとした目でひたすら座り続け、人々の助けを待ちぼうけている。もちろん、そうそう手を差し伸べる人は現れないが、彼らは常に同じ場所で物乞いをしている。
その日は薄暗いどんよりした一日でした。そんな中、ちょうど私がある一人のホームレスの前を通り過ぎようとした時、私の前を歩いていた女性が、そのホームレスに何かを差し出した。それは半分に切ったアボカドの皮にご飯とアボカドの実を詰め、サランラップで巻いたおにぎりのようなものだった。
私はその様子を傍でじっと見ていると、そのホームレスの男性は両手にそのおにぎりを置きじっと見つめて食べようとはしない。長い間そのおにぎりを握りしめた後ゆっくりと食べ始めた。その男性の本当に幸せそうなほころんだ笑顔は私の心に焼きついた。 色々なことを考えながら私も家路へと急いだ。彼は間違いなく空腹であるのにもかかわらず、慌てて食べようとはせず、たった一つのおにぎりに感謝し、味わいながらゆっくりと食した。物が溢れるこの世の中、食べ物一つに対し感謝することを忘れていた私にブレーキがかかったような気がした。
食事も沢山はいらない、少しの量を味わいながらゆっくりと食べたいと思うようになった。お酒もタバコ も気休めにたくさん吸ったり飲んだりするのではなく、一本一本味わって一つ一つに感謝したいと思うよ うになった。あのホームレスの男性に大切なことを教わった一日 であった。本当にありがとう。
(文:ニュージーランド在住、Reeoko/絵:吉田たつちか)07-07

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