春の夜空に明るいオレンジ色の星を見つけることができます。この星はアルクトゥルスと呼ばれる1等星で、全天で4番目に明るい星だと言われています。そしてこの星が、うしかい座の目印です。ちなみに、このアルクトゥルスと、近くに明るく輝く1等星、おとめ座のスピカとは「春の夫婦星」とも呼ばれています。また、この2つ星をつないで「春の大曲線」を描くことができます。
そして、この夫婦星に、しし座の2等星デネボラを結んで、「春の大三角形」といいます。うしかい座は、アルクトゥルスの上に見える、ネクタイのような形をした細長い五角形の、とても大きな星座です。
このうしかいのモデルになったのが誰なのかには諸説あるそうですが、いくつもある説のうち、有名なものをいくつかご紹介致します。
大神ゼウスと森の妖精カリストが愛し合い、あいだにアルカスという息子が生まれました。しかしゼウスの妻で嫉妬深いヘラはカリストに呪いをかけ、醜い熊に姿を変えてしまいます。熊になったカリストは息子を置き去りにして森の中でひっそりと暮らします。一方で息子のアルカスは、妖精マイヤに世話をしてもらい、大きくなります。ある日アルカスは狩りに出かけた森で熊と出会います。その熊こそアルカスの母親であるカリストだったのですが、アルカスはそうとも知らずにその熊に弓を引こうとしています。大神ゼウスはその様子を天から見ていました。ゼウスはアルカスは弓を放つ前に、2人を一緒に天に上げ、カリストはおおぐま座、アルカスはこぐま座、あるいはうしかい座になったのです。
また別の説。ギリシア神話には、ゼウスを大神とする時代の前に、「巨神族(きょしんぞく)」という神々が世界を支配していた時代がありました。その中に「アトラス」という、心のおだやかな巨神がいました。巨神族はゼウスたちと戦争をして敗れます。アトラス以外の神々は地獄へ落されてしまいましたが、気持ちのやさしいアトラスだけは、地獄行きを免れました。その代わり、一生天を支えるという仕事を引き受けさせられました。しかしさすがのアトラスにも、天を支え続ける仕事は苦痛でした。アトラスは、メデューサの退治に出かけるペルセウスに、自分を石にしてくれと頼みます。石になったアトラスを哀れに思ったゼウスが、アトラスをうしかい座として空に迎えたということです。(コラムニスト 気象予報士 チャーリー)2016-06