ただ、私は、彼の生命が任期中、危険にさらされる可能性は50%くらいあるのではないかと思っています。そして彼の身に万一のことが有れば、もう、アメリカの復活再生への道は完全に道が閉ざされてしまう・・・、なぜか、そんな気がしてなりません。
オバマ氏の生命が危険にさらされることについては、多くの方が、同様の危惧を持っておられるようですが、それは主として、オバマ氏が合衆国史上初の有色人種大統領となることを挙げられておられるようです。
が、私は、単に肌の色の問題だけにとどまらないと思っております。
(KKKのような、単なる白人の民間組織だけの行為なら政府権力からすればいくらでも押さえ込む術はあるでしょう。ケネディの時も、単なるマフィアだけの恨みであれば世界に冠たるアメリカ大統領が暗殺されるということはなかったはずです。)
おそらく、オバマ氏は大統領就任後、まずはブッシュのこれまでのデタラメな政策の見直しに着手することが予想されますが、それは、言い換えれば、これまでブッシュを操って莫大な利益を得てきた人たちにとっては容認し難い暴挙に映るでしょう。
で、その人たちがオバマの排除を画策するのに、KKKなどは自分の手を汚さずに目的を達成できる、実に都合が良い存在なわけです。
となれば、実行犯はその連中にやらせ、彼らが取り組むのは、自分たちの権益を擁護し、オズワルドの単独犯行にしてしまうことができる人物を政権に据えることでしょう。
(ちょうど、ケネディのときに置けるジョンソン副大統領のような存在ですね。)
それだけに、もし、オバマ氏の身に万一のことが有れば、それは単に彼個人の災厄というだけにとどまらず、アメリカは再び、ブッシュの時代に逆戻り・・・どころか、今後も、ブッシュ路線を突き進むことが既定路線になってしまう可能性が高いと・・・。
思えば、古代ローマ帝国でも、時代が進むにつれて、セプティミウス・セウェルスというアフリカ出身の皇帝が登場しています。
セウェルス家は、元々、何百年も前にイタリア本土から移住したローマ人だったといいますが、彼自身は、何代にも渡って、現地人との混血が進んだ北アフリカ系ローマ人であり、また、彼の母は生粋のローマ人だったといいます。
セウェルスは、皇帝に就任すると、度重なる皇帝暗殺と各地の軍団指揮官たちによる勝手な皇帝就任宣言により、混乱の極みにあった当時のローマ帝国を、瞬く間に統一。
さらに、ローマの混乱につけ込み、勢力を伸ばしていた隣国、パルティアに攻め込み、首都を陥落させると、ローマの安全保障上重要な地域であった北メソポタミアをローマ属州に組み込み、帝国に安定をもたらす。
次に、政敵を支援したとして多くの元老院議員を粛正し、権力を盤石の物にすると、次いで、軍事費の負担を軽減するために軍制の改革を行い、ローマ軍の質的な向上を図るなど、見事な手腕でローマ立て直しに邁進するも、彼が遠征先であっさりと部下に暗殺されると、ローマは再び衰退の坂を転がり落ち始めた。
世界のためにも、オバマ氏が任期と生命を全うすることを切に望んで止みません。
(文:小説家 池田平太郎/絵:吉田たつちか)
2008.12