手描きの絵葉書が流行している。年賀状でも、親しい人に送るものには、そうしている方も多い。挑戦してみたいけれど、絵は苦手という方もいらっしゃるだろう。しかし、筆を取らず諦めるのはもったいない。
まず、身近な物から描いてみる。最初に、普通の鉛筆でアウトラインを取っていく。この時に、一番、自分が綺麗だと思う場所はあまり手を加えないようにしておくこと。鉛筆の煤で、画面が黒くなってしまう恐れがある。
軽くアウトラインが引けたら、今度は、暗い部分から、色鉛筆で色を乗せていく。初めてならば、水彩絵の具よりも、色鉛筆の方が馴染みやすい。暗い所から明るい所へと色をおいていけば、失敗は少ない。ここで頭に置いていてもらいたいことが、暗い場所だからといって、黒を直接塗らないことだ。物をよくよく見ていくと、黒という色は、自然界には少ないことに気付く。
青に茶色を重ねて塗ってみると、自然な陰に見えてくる。単色で進めていくのではなく、色を重ねることで、奥行きをもたせていくのだ。
だんだんと色を置いていったならば、今度はねり消しゴムで、最初に描いた鉛筆の線を消していこう。ゴシゴシと擦って消すのではなく、押し付けるようにして消していく。こうすると、紙の痛みが少なくなり、色鉛筆でその上から描いても、デコボコが目立たない。
薄い色も乗せていったならば、仕上げに、一番明るい場所を、プラスチック消しゴムでハイライトを入れる。白色で書き込むのではなく、消していくことで、色を引き立たせるのだ。
出来上がった作品を、今度は眺めてみる。初心者ならば、あぁやっぱり上手く描けなかったと落胆することであろう。しかし、考えてみてもらいたい。最初から、上手な人間なんていないのだ。大事なのは、描こうと思った対象を、じっくり観察し、新しい発見をすることではないだろうか。その発見が楽しめるようになった時、絵も上達している筈だ。
(講談師 旭堂花鱗/絵:吉田たつちか)
2006.12