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幽霊の正体

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(絵:吉田たつちか)

夏になるとにわかに盛り上がってくるのが、幽霊などが登場する怪談話。肝試しに行かれる方もおられるでしょう。これはクーラーなどなかった時代、怖い話を聞いてヒヤリとすることで涼を取ろうという生活の知恵です。
 現代はクーラーも普及し、怖い話で涼む必要もないように感じられますよね。何より夜からは暗闇が消え、24時間明々と街頭が灯って幽霊が出にくい環境です。が、日本各地で幽霊は出現し続けているよう。それはなぜなのでしょうか。
 理由を解明する前に一つ思い出していただきたいのが、誰しもが幽霊を見られるわけではないということ。主に霊能者や霊感の強い人たちが幽霊を見ており、ほとんどの人は幽霊を見たことがありません。もしかすると霊能者や霊感の強い人たちが嘘を言っているかもしれないにも関わらず、未だ多くの日本人は「幽霊がいる」と考えています。
 これこそが幽霊の正体です。「いる」と思っているから、それらしきものを目にすると「幽霊」だと錯覚してしまうのです。例えば、点が3つ逆三角形に並んでいると人間の顔のように見えるシミュラクラ現象(類像現象)というものがあります。3つの点がそれぞれ目と鼻、もしくは口に見える。それが完全に目の形をしていなくても、脳内で補完して見てしまうのです。幽霊もこのシミュラクラ現象に当てはまるものがあるでしょう。
 他にも脳科学や心理学で解明できる心霊現象は存在し、科学的には幽霊など存在しないと結論付けられているようです。それなのに心霊体験が後を絶たない理由があります。それはとても現代的なもの。そう、ストレスです。
 不安や疲労が大きくなればなるほど、目の前に見えるものをそのまま受け止めることが難しくなります。不安が大きいからこそ自分の判断に自信が持てず、疲労しているからこそ正常な判断が下せません。肝試しで幽霊を見た人の多くは、悪いことをしている自覚が多少なりともあるため、その不安から幽霊を見たはずです。
 交通事故多発地帯で幽霊が出るのは、その場所が不安や疲労が高まりやすい場所なのでしょう。それを理解すれば、今後事故の減少につながります。無暗に怖がることは、さらなる事故を起こしかねませんので、冷静に対処したいですね。
 どうやら現代の幽霊がもたらしてくれるのは涼ではなく、「落ち着いてゆっくり」という心のあり方なのかもしれません。

(コラムニスト ふじかわ陽子)2022-0

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