(絵:吉田たつちか)
世の中騒がしくなりましたね。コロナ騒動、ウクライナ・ロシア戦争、円安などいまだにくすぶり続けています。
グローバルな社会になり、世界のどこでおきた出来事でも直接間接的に影響が日本にも伝播します。
円安といえば、小生が初めてアメリカにいった50年前、円は1ドル360円だった。今から思えば超円安だったわけだ。日本から持ち出せるお金にも制限があり、たしか5万円程度の小遣いだった。期待して食べたステーキは草履みたいに大きかったが硬くてあまり美味しくはなかった。
ラスベガスのホテルではお風呂の水が黄色く濁っていて閉口したが、砂漠地なのだからそうなのかと一人合点した。
数十年か後、日本がバブル景気にうかれていた時代に渡米したおりには、分厚く柔らかなステーキを食し、ホテルのバスタブのお湯は透き通ていた。
時代の変化でなく、旅行予算の差が原因だったのである。業界視察団の同行取材だったが、一緒にいった自動車修理工場の経営者達は、ブランドバックを棚買いしていた。最近の中国団体客の爆買いを笑えない風景だった。
円安で、食料品をはじめ輸入物価、輸入原料にともなう食材や電気・ガス、ガソリン代などが急速に値上がりして庶民の生活を苦しめている一方、大手メーカーや商社などは過去最高益を叩き出している。
外為特会で外債を持っている日本政府の含み益は今回の円安で37兆円にも膨らんでいるとの指摘もある。日本は富裕国なのか貧乏国なのかさっぱりわからない。コロナ過も沈静化局面を迎え、円安のメリットを享受できる海外からの観光客激増で、旅行・飲食業などもそれなりに潤うことが期待されている。
外貨資産もなく、わずかな小遣を握りしめて夜の安酒場を徘徊している小生にとっては、円の価値の上がり下がりは遠い国の出来事としか思えず、格段のメリットもデメリットもない今日このごろだ。
(ジャーナリスト 井上勝彦)2022-11