街の色が、赤と緑のクリスマスカラーに包まれ始めると、今年の終りが近付いてきていると感じる。一年を振り返り、来年こそはいい年にと考えるのだが、中々上手くいかないものだ。だったら、念入りに大掃除をしてみるのは、どうだろう。住まいを綺麗にすることで気分も変わり、また新たな決意で新年を迎えることが出来る筈だ。
しかし、いつから大掃除をしたらいいのか、判らない。早くに済ませてしまうと、お正月が来る前に、薄っすらとホコリが溜まってくる。これでは意味が無い。
「事始」というものをご存知だろうか。歌舞伎など芸事の世界で、来年も宜しくお願いしますと、挨拶に回る行事だ。東京では十二月八日、関西では十二月の十三日が、事始の日だ。事始までに、仏様や神様がおわす仏壇や神棚を清め、事始が終わってから、身の回りの片付け、大掃除を始めるのが慣わしだ。
元々は「煤払い」と呼ばれていた大掃除。昔は家の中で火を使うことが多かった為、部屋の中に煤がつく、これを落すから、こう呼ばれていた。今でも、寺院などの大掃除は、煤払いと言われることが多く、五穀豊穣の神への祈りも込められている。この一年、見守ってくれた、お礼の意味を持つのであろう。
今年のクリスマスは、幸か不幸か、三連休だ。一人で寂しく過ごす方は、来年は誰かが隣に居ますようにと、祈りながら大掃除をするのも一興だ。ホコリと共に、厄も落ちていくかも知れない。そう考えると、面倒臭い大掃除にも、気合が入るような気がする。
(講談師 旭堂花鱗/絵:吉田たつちか)
2005.12