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活字読書の助っ人

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(絵:吉田たつちか)

田舎のカラオケスナックは客層が偏るのが普通だ。その理由の一つが、歌の好みが、高齢者と若者では全く違うことだ。スナックのドアを開ける前に中の様子をうかがう。甲高いテンポの速い歌声が漏れ聞こえると、その店に入るのをパスする。若者が集まっているからだ。今や、美空ひばりや石原裕次郎を知らない若者も少なくない。かくて、田舎のスナックの多くは老人のたまり場と化している。
 小林旭の「遠き昭和の・・・」を聞くと昭和世代の気持ちが一つになり、共通のノスタルジーな気分で、酒も旨くなる。そんなスナックのママも同世代の高齢者なので、話題も共感できる。
 小説なども同じで、どうも、最近の若者の書く小説にはなじめない。そうかといって、視力の衰えで、持続して読むのも億劫になってきた。
 以前、聞く読書というキーワードでコラムを書いたが、聞くだけではなにか物足りない。というか、聞くだけではなかなか頭に入らない。
 少年のころラジオから流れてくる「赤胴鈴之助」に夢中になったのだから、読む読書はイメージが膨らんで、違和感がないと思っていたが、やはり、読書は活字も追いたい。
 家の中に本を増やしたくないので、最近は、電子書籍Kindle本を購入することが多い。Amazonでゼロ円にて購入できる日本文学に嵌っている。最近、知ったのだが、スマホにダウンロードして、二本の指で画面を上から下にスクロールすると読み上げてくれる。すなわち、読み上げてもらいながら活字を追うことができるので、楽々読書ができる。
 吉川英治の「新書太閤記」や与謝野晶子現代語訳の「源氏物語」といった長編小説だって苦も無く読むことができる。
 また、スマホアプリの「青空リーダー」なら、日本の古典文学が読み上げ機能付きで活字を追える。しかも全てタダなのがうれしい。
 いずれのシステムもまだ誤読が少なくないが、これも頭の体操にいい。さらに、AIの進歩で、読み上げる声も自然体に近いレベルになってきたのがうれしい。
 最近、時代の変化が目まぐるしい。昔、手塚治虫が「鉄腕アトム」で描いていた21世紀の未来像の多くが、今や、実現しているか実用化まじかとなっている。
 これから、どんな世界が始まるのか見たい・見られるので、長生きも捨てたものではない。

(ジャーナリスト 井上勝彦)2024-06

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