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自然にまかせる

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(絵:吉田たつちか)

 小生の住んでいる町内の環境美化運動(掃除)は年に4回行われる。70世帯前後の小さな町内だが、半分は常住者で残りが別荘族である。最近は、リタイヤした方など常住者となったり、長年空き家になっていた別荘を購入して常住する若者や外国人も増えてきた。
 町内環境美化運動とゴミステーションの掃除係(当番制)は常住者に義務付けられている。
 空別荘や空き地も増えており、木々や雑草が道まで伸びている。夏季の町内掃除は体力がいる。草払機での伐採や側溝の掃除などの重労働は若手(とはいっても50代~60代)が頑張ってはくれているが、住民の高齢化は年々進んでおり、亡くなったり、施設に入ってしまっている人も増えている。
 今年は、町内掃除中に蜂に刺されて救急車で運ばれたり、熱中症にかかる人も出た。町内会では、町内行事中での事故に対応した保険には加入しているものの早晩、住民だけではこのような清掃活動も難しくなるので、シルバー人材の活用も視野に入れる必要があるかもという意見も出た。
 我が家の右隣の家は10数年前に持ち主が亡くなり、相続した息子は遠くに住んでいるため、売りに出していた。その後、買い手が付き、野菜を育てたいといって時々は草刈りにもきていたが、最近は諦めたようで、雑草におおわれている。
 左隣はミカン畑で、蜜柑の収穫にだけは来ていたが5~6年前からは放置されたまま。当初は篠竹が繁茂し、猪が蜜柑の根回りを掘り起こしたため、実がならなくなったり、枯れてしまった。最近は、篠竹を押しのけて雑木が勢いを増している。鳥や小動物が木の実をまき散らし、芽が出て、小さく育っていたのが、急に大きく成長し、今や篠竹をものともせずに勢いを増している。木は、しっかりと根を張るまでは年月を要するが、ひとたび、深く広く根づくと、あれよあれよという間に大きくなる。
 木の幹にはツタ類が這い登り、カズラや葛などのつる草が木々の枝葉に覆いかぶさる。放置畑はすでに自然に帰っていて、猪や小動物の格好の棲み処となっている。
 今年は「森の宝石」とも呼ばれる玉虫をベランダで5匹も捕獲した。虫かごを買い、餌を調べたら、エノキ(榎)に飛来するというので、エノキを探したら、そこいらじゅうにエノキがあることがわかり、手折って虫かごに入れてみたが3~4日で死んでしまった。玉虫の寿命は約2ヶ月とのことで、紙の箱に綿を敷いてしまってある。(お金が貯まるおまじない)
 「雑草という名の草はない」と植物学者の牧野富太郎が述べ、後に、彼に植物学のレクチャーを受けたことがある昭和天皇が同様の言葉を発したとされているが、雑草も捨てたものではない。
 町内の道も人や車が通るのに支障がなければ、自然に任せるのが良いかもしれない。秋をむかえ集く虫の音に耳を傾けるのも風情がある。

(ジャーナリスト 井上勝彦)2024-10

 

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