●「何を食べるか」で、夏の体調は大きく変わる
今年の夏は各段に暑いですね。この暑さで夏野菜がかなりダメージを受けているそうな。同時に水不足によるコメの収穫も心配になります。
さて、夏になると、食欲が落ちてしまうという人も多いことでしょう。冷たい飲み物ばかりに手が伸び、気づけばアイスとそうめんばかりという方も少なくないと思います。
けれど、「何を食べるか」で、夏の体調は大きく変わってきます。今回は、夏ならではの食べものを楽しみつつ、夏バテを防ぐためのヒントをいくつかご紹介したいと思います。
●戦前や江戸時代の夏バテ予防の知恵
まず、夏といえばやっぱりスイカ。冷たく冷やしたスイカを口に入れると、ほてった体がスーッと涼しくなりますよね。スイカの約90%は水分ですが、実はカリウムやシトルリン(強くしなやかな血管を作るアミノ酸)といった成分も含まれていて、むくみ防止や血流改善にも役立ちます。
利尿作用があるので、体の中にこもった熱を外に逃がしてくれるのも嬉しいポイントです。
スイカに似たような感覚で、江戸の庶民に人気だったのが「うり類の漬物」です。とくに奈良漬けや瓜の粕漬けは、保存性が高く、食欲が落ちがちな夏にもお茶うけや白飯の友として喜ばれていました。アルコール分が少し残る粕漬けは、食欲増進の効果もあったといわれています。
皆さまはもう夏のスタミナ食の定番「うなぎ」は食べたでしょうか? これは江戸時代の学者・平賀源内が『夏は「う」のつく食べ物を食べると体に良い』、というキャッチコピーを考案したことが始まりだといわれています。
うなぎにはビタミンB群が豊富に含まれており、今でも疲労回復に効果的な食材として親しまれています。
他に「う」のつく食べ物といえば「うどん」、前述した「うり類」は体を冷やす効果があるとされ、「梅干し」などがあります。
梅干しは昔から「食欲がないときの味方」。クエン酸が豊富で、疲労回復にも効果的。朝ごはんの白いご飯にちょこんとのせるだけでも、なんとなく元気が出てきます。
一方、戦前の日本の家庭では、暑さを乗り切るために「甘酒」が飲まれていました。甘酒といっても、酒粕ではなく米麹で作るタイプのもの。アルコール分はなく、ブドウ糖やビタミンB群、必須アミノ酸が含まれているため、「飲む点滴」と呼ばれるほど栄養価が高いのです。現在のように栄養ドリンクがなかった時代、甘酒は庶民の健康を支える貴重な栄養源でした。
●現代の夏バテ予防の知恵
現代に戻ってみると、夏バテ防止におすすめしたいのが、丼もの+汁物の組み合わせ。たとえば、豚しゃぶ丼や鶏そぼろ丼のように、肉と野菜をご飯の上にのせた丼スタイルは、手軽に栄養バランスが取れます。そこに温かい味噌汁やスープを添えることで、冷えた胃腸をやさしくいたわることができます。
夏は野菜もおいしい季節。トマト、ナス、きゅうり、オクラ……どれも体を冷やし、ビタミンが豊富です。トマトにはリコピンという抗酸化成分が含まれていて、紫外線対策にも効果的。江戸時代にはこれらの野菜を味噌和えや酢の物にして食べていました。酸味のある料理は、食欲増進にも一役買ってくれます。
そして、現代でも見直されているのが発酵食品。納豆、ぬか漬け、味噌、ヨーグルトなど、腸内環境を整え、免疫力を高めてくれます。江戸時代にも、ぬか漬けや味噌汁は毎日の食卓に欠かせない存在でした。夏こそ、こうした「発酵の力」を借りたいところです。
どんなに栄養のあるものでも、「おいしい」と感じて食べることが、いちばんの元気のもと。江戸の町人たちも、質素ながら工夫をこらして夏を楽しんでいたようです。私たちも、今ある食材に少しだけ目を向けて、季節の恵みを味わいながら、暑さを乗り切っていきたいですね。
(巨椋修(おぐらおさむ):食文化研究所)2025-09




