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鮎漁の解禁

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06-06-4全国の多くの河川で「鮎漁-あゆりょう-」が解禁となり、味覚の上でも夏の気配が色濃くなる時節となりました。
秋に孵化した鮎の稚魚は川を下って海で冬を越し、翌年の春再び川を遡って姿を現します。春に川に上る鮎を「若鮎-わかあゆ-」、秋の産卵期に腹子を抱えたメスの鮎を「子持ち鮎」といって日本料理において特に珍重され、季節感を強く感じさせてくれる味覚の代表格です。
鮎の稚魚は主に動物性の物を餌としますが、成長するに従い水底のケイソウ、ランソウ等の石苔を食べるようになるので鮎特有の香気が強くなり、別名「香魚-こうぎょ-」とも呼ばれています。
最近は魚肉などを加えた配合飼料を与えた養殖鮎も多く生産されていますが、やはり香気に乏しく天然物には及びません。
鮎は秋の産卵を終えると再び川を下り、海に出てその一生を終えます。一年しか生きないといわれるところから「年魚-ねんぎょ-」とも呼ばれています。
夏の風物詩として有名な岐阜県・長良川の「鵜飼-うかい-」は、「古事記」や「日本書紀」にも記述がある鮎の古典漁法で、織田信長、徳川家康など時の権力者たちの保護を受け今に続いています。
暗闇に包まれた川面に、燃え盛る篝火が映る幻想的な雰囲気の中、烏帽子をかぶり腰蓑をつけて鵜舟に乗りこんだ鵜匠が現れます。縄で繋いだ10~12羽の鵜を水中へ追い、鵜が鮎を飲み込んで捕らえると鵜を手繰り寄せて吐き出させ、再び水中へと追い立てます。代々世襲制である鵜匠は常日頃から鵜と一緒に生活していて、その手縄さばきは見事の一言。
目の前で繰り広げられる歴史絵巻は現実離れした勇壮な風景ですが、どこか侘しさが漂い、俳聖・松尾芭蕉も
「面白ろうて やがて悲しき 鵜舟かな」
という有名な一句を残しています。
「年魚」と呼ばれる鮎のはかなさや、短い季節の移り変わりまでが感じられるような名句ではないでしょうか。
(文:現庵/絵:吉田たつちか)2006-06

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