夏の行楽シーズンをどのようにお過ごしですか?
旅先のホテルやレストラン、観光施設などを訪れて感じるのはホスピタリティではないでしょうか。ホスピタリティとは「思いやり、心遣い、親切心、誠実な心、おもてなし」です。ホスピタリティを感じれば、旅の印象はぐっと高まり、思い出に深く刻まれます。
サービスを提供する側も、上質なホスピタリティを学び、そして心掛けています。
このホスピタリティというサービス理念は、キリスト教徒のエルサレム巡礼が基となっています。交通手段が発達していなかった昔、ヨーロッパ各地からエルサレムへたどり着くまでかなりの月日を要しました。
例えばハンブルグからだと二年もかかったとか。そうなると必要となってくるのが宿泊施設と病院です。長旅の道中では突然の怪我や病気も起こりますからね。
そこで、設けられたのがホスペス(hospes)という施設。ラテン語で客人の保護者という意味です。ホスペスでは無料で巡礼者を泊めさせ、無料で治療もしていました。なぜならイエス・キリストの前では、みな平等。困っている人がいれば助け合い、病気の人がいれば面倒をみるのが当たり前という考え方だったからで
す。ホスペスを利用した巡礼者は「ありがとう」と礼を言い、そしてエルサレムへ旅立つのでした。
ホスペスは、やがて宿泊を専門としたホテル(hotel)と病院
(hospital)に別れます。良く見ると、英語のつづりが似ているのに気がつきませんか? hotelもhospitalもhospesからできた言葉なのです。
それを知ると、今まで自分がお世話になったホテルや病院で、どうしてあんなに親切だったのか解かるような気がします。今やホスピタリティの心意気は、あらゆる業種に広まっています。そして、ホスピタリティを受ける私達が「ありがとう」と言うことが、最上の礼儀であることには今も昔も何ら変わりないようで
す。
(フードアナリスト 愛川いつき/絵:そねたあゆみ)2013-08