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英雄、残酷さと一瞬の微笑

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08-07-3三国志の中で、「乱世の奸雄」と呼ばれ、影の主役と呼ばれた魏の武帝・曹操が、あるとき、二人の敵将が籠もる城を攻撃した時。鎧袖一触!これを撃破し、敵将二人は、這々の体で城を逃げ出したがそのうちの一人が捕まって、曹操の前に引き出されてきた。
その降将は「俺は、本当は貴公に敵対するつもりはなかったんだ。もう一人のあいつにそそのかされたんだ」と釈明した。
それを聞いて曹操は、「では、なぜ逃げた!?」と。
その男は、「うっ!」と詰まりながらも、苦し紛れに「そ、それは・・・、付き合いだ」と一言。
その答えに、曹操は思わず吹き出して大笑い。
呵々大笑し、この男は一命を助けられたという。
大体において、英雄というものは多かれ少なかれ残酷なことをやっているもので、ある意味、マキャベリの言う「君主は愛されるより恐れられよ」ではないが、まあ、権力者の意向が適正に行われる為には、時として、配下の荒くれ兵士どもが震え上がるような、それ以上の残酷なことをしなければ、威令が行われないというところもあるのでしょう。
その典型が、中世のイングランド人の傭兵隊長、ジョン・ホークウッドでしょう。
この人物は、占領地で部下二人が、捕らえた美しい尼僧を巡ってにらみ合いになったとき、「待て待て、我々の掟では、何事も平等に・・・となっているだろうが」と言いながら、長剣を抜くや、「あ!」っと言う間もなく、その尼僧を頭蓋骨から尾てい骨まで、縦に一刀両断にしてしまったそうです。
青ざめる部下たちに向かい、ニコニコ笑いながら、「さあお前たち右でも左でもどちらでも好きな方を選んで良いぞ。これで平等だ」と言ったとか。
「未開の蛮族ほど、恐怖という物に理屈抜きに従順」だということでしょうか・・・。
曹操もその点では、無名時代に人相見から、「治世の能吏乱世の奸雄」と言われたという話がありますが、実際に、怒りの余り、一州をまるごと皆殺しにした・・・などという残酷な話には事欠きません。
癇癪持ちで、残酷なことをしたことでは曹操以上だと言える織田信長も、行軍中に見かけた障害者に情けを掛ける・・・というエピソードがあります。
こういう人達は、何かの拍子に、突然、人間らしい感情が甦るのかもしれませんね。この人たちに限って、残酷さが演技ということはないでしょうから・・・。
(文:小説家 池田平太郎/絵:吉田たつちか)08-07

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