私は元々、大河ドラマは結構、好きだったのですが、以前に比べ、最近は何か視聴者にすり寄ってるよなーって感じを強くしています。 本来、すり寄らないからNHKなんでしょうが・・・。 最近の作品の中で一番よかったのは、モックンがやってた「德川慶喜」でした。 その徳川慶喜ですが、彼の妻も母も養母も高級公家の出身であり、逆に慶喜の伯母さんは公家に嫁いでおり、関白は従兄・・・という、德川家と朝廷とは幾重にも張り巡らされた縁戚関係にあったわです。それから、先代将軍の未亡人は孝明天皇の妹、和宮であり、彼女が嫁ぐときに運動したのが岩倉具視であり、さらに、先々代将軍の未亡人は薩摩の島津家の出身、天璋院篤姫であり、彼女が嫁ぐときに主君、成彬の命を受け一切の世話をしたのが西鄕隆盛・・・。
よくこれで、明治維新ができたなと思います。(この辺は、第一次大戦の時のヨーロッパの王室もしかりですね。カイザーもツァーリもハプスブルグ家も皆親戚であり、まさか、これらの王室がいっぺんになくなるとは、当時は誰も思わなかったのではないでしょうか?
歴史というモノは、動くときには実にあっさりと動きますね。たとえ、どれほど歯止めが打ってあっても・・・。)
孝明天皇なき後の慶喜にとっては、幕軍10万よりも、これらの人間関係のほうが、はるかに強力な援軍だったのではないでしょうか?特に「慶喜追討」の際には、先代、先々代のこの二人の将軍家未亡人から言われたら、西郷も岩倉も何も言えなかったんじゃないですか?
「岩倉、今度はこなたが私の願いを聞く番ではごじゃらぬか。」
「吉之助、そなたは亡き成彬公の命により嫁して参った私に兵を向けると申されまするのか!」
共に主筋であり・・・、輿入れには自分たちが深く関わったわけですから、もう、「ははー。」しか言えないでしょう。
改めて、幕末維新というのは、女たちの戦いでもあったのだと思いました・・・。
さておき、慶喜に対する歴史の評価は賛否あると思いますが、少なくとも普通の王様は自らの王朝が滅亡するなら、国も国民も道連れにしてやろうと思ってもおかしくはないわけですし、実際、オスマン・トルコのスルタンなどには、そういう動きがあったと聞いてます。
それを考えたなら、自らが汚名を受けながらも、それをしなかったわけですから、私はもっと、高い評価をされてもいいと思いますけどね・・・。
(文:小説家 池田平太郎/絵:吉田たつちか)07-07