夏の夜空、天頂の南よりに、大きな星座があります。明るく目立つ星はないのですが、へびつかい座といいます。へびを操る医者と、その頭部にはへびがいます。医者の部分とへびの部分とを合わせた大きさは、全天88ある星座の中で最も大きい星座となります。天の黄道(太陽の通り道)に少し掛かっているということで、以前「13星座の星占い」というのが話題になりましたが、さそり座といて座のあいだに位置し、この13番目の星座とされたのが、へびつかい座でした。
では、へびつかいが星座になったギリシア神話を紹介します。
当時からす(からす座)は、真っ白できれいな鳥でした。そして人間のことばで会話をし、予言の神アポローンに仕えていました。しかしあるときずる賢いからすは、アポローンの恋人であるコローニスが、別の人間の男とも付き合っているというデタラメを、アポローンに告げ口します。
怒ったアポローンがコローニスの所へ行くと、人影が見えます。アポローンはそれこそがコローニスの浮気相手だと思い、矢を放ちます。しかし、実はアポローンが射殺してしまったのは、コローニス本人だったのです。コローニスは息絶え絶えになりながら、自分に愛人などいないと、身の潔白をアポローンに訴えます。加えてコローニスのお腹の中にはアポローンとのあいだにできた赤ちゃんがおり、なんとしてでもこの子の命だけは助けてくださいと願いながら息を引き取ります。
この赤ん坊は、賢者ケイローン(いて座)に育てられ、立派な医者アスクレーピオスになりました。アスクレーピオスは、蛇によって薬草に効能があることを知りました。そのため蛇を自分の象徴としました。(今でも医学の象徴は蛇とされています)そのアクレーピオスは、アルゴー船(アルゴ座)に乗船しました。医術の腕はますます上がり、死者さえも生き返らせることができるまでになりました。
それを知った冥界の神ハーデスは、アクレピーオスに対して強い憎しみを持ち、大神ゼウスの雷によってアクレピーオスは殺されてしまいました。しかし生前の医者としての活躍が認められ、その象徴であった蛇とともに、夜空を彩る星座になったと言われています。
(コラムニスト 気象予報士 チャーリー/絵:そねたあゆみ)2015-08