(文:食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ)/絵:そねたあゆみ)2017-3
●もっとも人気の麺類は?
日本人は世界的にみても麺大好き民族。すなわち麺族です。日本で人気の麺といえば、うどん、そば、ラーメン、スパゲティ。その中でもっとも店舗数が多いのが、タウンページに登録されているのを調べてみると
1位ラーメン、35,330軒。2位そば、24,924軒。3位うどん、24,030軒。と、なるようです。
スパゲティは専門店が少ないので不明。
自分で書いておきながら言うのもなんですが、もっともうどんとそばは同じお店で出されていることが多く、スパゲティも喫茶店などで出されていることも多く、この店舗争いでははあまり意味がないかも知れません。
1位のラーメンが広く食べられるようになったのが戦後ですから、日本に古くからあるそばやうどんを抑えての1位とは、この新興勢力の勢いはすごいものがありますね。
ネットの「ニフティなんでも調査団」の好きな麺類アンケート調べによると、やはり1位はラーメン、2位そば、3位うどん、4位がパスタ(スパゲティ)となるようです。ただし女性限定となると、1位パスタ、2位ラーメン、3位うどん、4位そばとなるそうです。
●うどん県は香川や関西だけではない
一般に「関東はそば」「関西はうどん」が好まれていると思われているようですが、実は関東の人たちもうどんが大好きで、東京や埼玉西部の「武蔵野うどん」は、讃岐うどん以上のコシの強さで噛み応えがあるうどんが有名。
逆に柔らかいうどんですと、ほとんどコシがない太麺の三重県の伊勢うどん。九州の博多うどんは細麺で、やはりとても柔らかく、他のうどんが麺を主眼にしているのとちがい、ダシを主眼にしており博多うどんを愛するタレントのタモリさんが博多うどんを指して「うどんは飲み物」という名言を残しているくらいです。
●ラーメンは日本食?
日本で最初にラーメンを食べたのは水戸黄門だという説もあるのですが、それはさておき、どうもラーメンの最初は、横浜港で働く中国人相手に、屋台で日本そばを売ろうとした日本人がいたらしいのです。
しかし、慣れない味の日本そばを中国人たちは好まない。そこでそのご主人は知り合いの台湾人に相談し、スープをカツオだしから鶏ガラ&しょうゆ味に変え、麺も日本そばの麺から中華風の麺に変えたのがはじまりだとか。
この流れの味が、最初のラーメン店舗東京浅草の『来々軒』に受け継がれ、さらに『来々軒』で修行をした人や真似た人が全国に、いろいろなラーメンを伝えたといいます。
つまりラーメンは中国から伝わったというより、最初は日本で働く中国人労働者相手に、日本人が中国人の口に合うように中国風日本そばを考案して出したのはじまりであるらしいのです。
また、当時はラーメンという呼び名はなく、中華街のことを南京町と言っていたため「南京そば」と呼び、後に「支那そば」、戦後になると「中華そば」、そして1958年(昭和33年)世界初の即席めんであるチキンラーメンが売り出されるようになり、「ラーメン」という名称が一般的になりました。偉大なりインスタントラーメン!
●スパゲティはラーメンになれるか?
うどん、そばは日本に古くからあるものですが、ラーメンは明治時代、スパゲティは昭和の戦後に日本人に親しまれるようになった料理です。
スパゲティは、戦後進駐軍であるアメリカ人たちが軍隊の配給品として食べていたもので、茹でた麺にケチャップを和えたカンタンなものでした。それを日本の料理人が改良し、玉ねぎやピーマン、ハムの細切りなどを炒めて作ったのがナポリタンです。
アメリカ人は麺に髪の毛一本の硬さを残す「アルデンテ」を好みません。そのせいか バブル時代のイタメシブーム以前では、日本でも麺は柔らかめで「アルデンテ」の発想はありませんでした。
しかしなんでも改良してしまうのが日本人! スパゲティはラーメンやカレーと同様、日本の国民食といってもいいほど親しまれ、なんでも改良してしまうのが日本人の手により、たらこ、納豆、醤油などを使った和風スパゲティをどんどん開発。
まだ、さっぽろ味噌ラーメンや九州とんこつラーメンのように全国的に大ヒットするような“ご当地スパゲティ”は出てきていないようですが、そのうち大ブームになるようなスパゲティが生まれるかも?
さらにこれから、うどん、そば、ラーメン、スパゲティに新しいアレンジ料理や、また新たな麺類が、麺類の仁義なき戦いに参戦するかも?
はたして麺類の仁義なき戦いは、日本人が麺好きである限り、終わることはなさそうです。
(食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ))/絵:そねたあゆみ
2017-03