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『古事記』の神々(その6)黄泉の国1

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(絵:そねたあゆみ) 

 前回は、妻が亡くなる原因となった「火の神さま」を、伊邪那岐命が手にかけて、そのなきがらからも新しい神さまがたくさん誕生したお話を書きました。妻である伊邪那美命が息を引き取る原因を作ったとはいえ、伊邪那岐命は自分の子どもを自分の手で斬ったということで、日本の神話の残虐さがよくあらわれているなと感じます。しかし裏を返せば伊邪那岐命の妻への愛情がそこまで深かったということで。
 伊邪那岐命は死者の住む国、すなわち「黄泉の国」へ、伊邪那美命と会うために向かおうとします。いわゆる「この世」と「あの世」との境に、分厚い扉がありました。伊邪那岐命は、そこで妻と対面しますが、そこは真っ暗です。伊邪那岐命は、言います。
「わたしたちの国造りはまだ終わっていないので、こちらへ帰ってきてもらえませんか?」
 すると伊邪那美命は、「わたしはもうこちらの国のものを口に入れてしまったので、ここから出ることはできません。でもせっかくあなたがいらしてくださったのですから、黄泉神(よもつかみ)に相談してみます。けっしてわたしを見ないでくださいね」と答えました。妻がなかなか戻ってこないので、待ち侘びた伊邪那岐命は、自分の髪を止めていた櫛に火をつけて、その場に光を灯してしまいました。
 すると、足元には蛆虫(うじむし)が全身にたかり、頭には大雷(いかづち)、胸に火雷(ほのいかづち)、腹に黒雷、女性の陰部には折(さき)雷、左手に若雷、右手に土雷、左足に鳴雷、右足に伏(ふし)雷の、八柱の神さまを伴った姿が横たわっていたのです。
 伊邪那岐命は恐れをなして逃げようとしたとき、伊邪那美命に見つかりました。伊邪那美命は、
「わたしの恥を見てしまいましたね」
 と言い、黄泉醜女(よもつしこめ)に伊邪那岐命を追いかけさせました。
 ここから、伊邪那岐命と黄泉の国の住人たちとの追いかけっこが繰り広げられるのですが、そのお話はまた次回お届けします。またたくさんの新しい神さまが誕生していきます。
((コラムニスト 気象予報士 CHARLIE))2017-09

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