(絵:吉田たつちか)
昔話『桃太郎』は日本人なら誰でも知っている昔話です。桃から生まれた桃太郎が、犬・猿・雉のお供を連れて鬼退治。私たちが知っているこの形になったのは、明治時代だといわれています。国威発揚のために勇ましい物語になったとのこと。それ以前もさほど大きな違いもなく、勧善懲悪の物語として庶民に親しまれていました。
さて、この『桃太郎』、実は部下のモチベーションを上げるための要素が盛り込まれたものなのです。桃太郎は犬・猿・雉といった様々なタイプのお供を束ねていますよね。実際に部下を持ったことがある人なら、様々なタイプの部下を束ねるのは難しいとご存じでしょう。では、どうやって桃太郎はタイプの違うお供を導いていったのでしょうか。
その方法とは、犬・猿・雉を「正義の味方」にすることです。鬼退治は平和な生活を送る上で排除すべきもの。排除は虐げられている人たちにとって「正義」なのです。この「正義」という使命を犬・猿・雉に与えることで、桃太郎はタイプの違うお供をまとめていきました。
人間は正解を求めて成長を続ける生き物。これは生物全般にもいえることです。不正解だった場合、野生動物なら「死」が待っていますから当たり前といえるでしょう。正解の中でも「正義」は大きな快楽を与えるものでもあります。自分という人間に圧倒的な正当性を与えるので、オドオドと怯える必要がなくなるからです。
正義を与えられた犬・猿・雉は勇敢に鬼と戦い、ついに打ち勝ちました。これがもし、きびだんごという報酬のみでしたら、ここまでの働きはできなかったでしょう。やはり、自分は「正義の味方」であるという自負が、ここまで勇敢になれた所以でしょう。
これを現代に応用するには、部下に「正義の味方」になるための理由を伝える。例えば、下着メーカーであるなら、下着で世の女性の体形を美しくする。これが会社にとっての「正義」です。そして、これを世に伝えることが「正義の味方」になるために必要なこと。このように会社の正義を伝えるようにすれば、様々なタイプの部下であっても束ねていくことが可能です。
実はコレ、モテテクにも応用できるんですよ。自分と付き合うことが「正義」だと相手に暗に伝えることで、人が集まってくるのです。ただし、これはよく考えて実行してくださいね。失敗すると、あなたの恋はどんぶらこと川下に流れていくでしょう。(コラムニスト ふじかわ陽子)2020-06