(絵:吉田たつちか)
新型コロナウイルス感染症絡みのあおり報道に辟易してきたので、ネットで対峙意見の識者を調べると、京都大学の宮沢孝幸准教授がヒットした。You Tubeには藤井聡氏や武田邦彦氏との対談や「そこまで言って委員会」での発言も興味深く聞いた。同じ立ち位置の識者の意見だけでは、情報を正しく理解出来ないことが多いので反対の意見も合わせ見ることが大切だ。
ネットのコメントには宮沢孝幸氏が獣医師であることを理由に、本当の医者でもないのにと、揶揄する人もいた。
医学部よりも獣医学部の方が入学偏差値が低いといいたいのだろうが、レベルの低い批判だ。いろいろ調べてみてわかったことだが、こと、ウイルスに関して言えば、獣医師、生物学者、植物学者などの方がより深く・広く研究している専門家のようだ。
昆虫学者のウイルスに関する知見も興味深い。ウイルスを媒介する虫は蝶類が最も多いのだそうだ。蛾の一種である蚕は今やウイルス研究や薬を作る媒体としても最も貴重な存在で、大活躍しているらしい。皇后陛下が養蚕をしていることからもわかるように、蚕は我が国における最も重要な虫だ。
ウイルスはまた、知能があるがごとく動物を操っているとの研究も多数ある。たとえば、バキュロウイルスは蛾の幼虫を洗脳して、木のてっぺんに登らせ、そこでじっとしているように操られる。幼虫のほぼ全身にウイルスを増殖させると、さらに他の遺伝子を用いて幼虫の体を溶かす。幼虫の体はウイルス粒子を無数に含んだ液体となってしたたり落ち、それより下に生い茂る木の葉に付着する。それを食べた他の幼虫がまたウイルスが感染する。そして、この虫を食べた鳥がウイルスを広範囲に伝染させることで、ウイルスが生きながらえる。(ペンシルバニア州立大学の昆虫学者ケリ・フーバー)
日本では根絶した狂犬病(海外ではまだ猛威をふるっている)だが、これもウイルスの仕業で、発症した犬は、目についたあらゆる動物にかみつき、ウイルスを感染拡大させる。狂犬病にかかった犬を操っているのはウイルスだという。まるでゾンビのふるまいとそっくりではないか。
蝶や鳥、今回のコロナ発症源とされているコウモリなど、自由に飛び回れる動物はウイルスにとって最も都合のいい存在(宿主)だ。ウイルスは人間より前に地球に存在していたという。ウイルスの側にたってみれば、地球の主は我々であり、人間は我々の下僕であるということなのかもしれない。ウイルスが今後も生き延び地球で繁栄するためには、せっかく感染させた人間が死んでしまうのがもっとも困るわけで、死なせてしまった場合は、宿主の選択を誤ったことになるのかもしれない。
そういえば、一時期安倍首相関連として騒がれていた愛媛県今治市の加計学園(岡山理科大学獣医学部)はBSEや鳥インフルエンザ対策の一環として設立が認可されたわけだが、今回の新型ウイルスを契機に、大幅に予算を積み増して、ウイルス研究のメッカとして、全国のこの分野の専門家を結集させて、世界的な研究機関としたらどうだろうか。
(ジャーナリスト 井上勝彦)2020-08