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昔話『鉢かつぎ姫』から学ぶ幸せのヒント

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(絵:吉田たつちか)

 大阪府の昔話に『鉢かつぎ姫』というものがあるのをご存知でしょうか。日本版シンデレラといえる昔話で、昔から親しまれています。
あらすじはこの通りです。
 あるところに美しい娘がおりました。彼女の母親はその美しさで禍が起きないか心配していましたが、長谷観音から夢のお告げを受け、娘に大きな鉢をかぶせます。美しい顔を隠し暮らすことで、娘は幸せな暮らしを送れるようになると。
 母親はこれを娘に伝えると、鬼籍に入ってしまいました。鉢を被った娘は「鉢かつぎ姫」と呼ばれるようになり、その奇妙な姿から多くの人から酷い目に逢うようになります。それでも、彼女のひたむきに生きる姿に胸を打たれる公家の男性が現れます。
 彼は鉢を被った醜い姿ではなく、彼女の立ち振る舞いや教養深さに心を奪われたのです。思い切って求婚をしたところ、なんと鉢が真っ二つに。中から現れたのは、輝くばかりの麗人。何の障害もなくなった二人は晴れて夫婦になり、子宝にも恵まれ幸せに暮らしたといいます。そして、生涯に亘り長谷観音に感謝をしました。
 この『鉢かつぎ姫』と『シンデレラ』が似ているのは、最初、とても苦労をしている点と「王子様」といえる男性から見初められる点です。しかし、大きく違う点があります。それは、「王子様」が美しさに目を奪われたか否かです。シンデレラは王子様から一目惚れされ、ガラスの靴を持って探してもらいましたよね。でも、鉢かつぎ姫は違います。美しいかどうか分からない状態で、彼女を好きになってしまいました。それは、彼女が誰かと自分を比べたり妬んだりせず、真っ直ぐ生きていたからでしょう。不憫な境遇であったとしても勉強を怠らず、教養も深めました。これこそ、現代に生きる私たちが学ぶべきことではないでしょうか。
 情報化社会の現代は、個人の情報もインターネットで発信できるようになった分、誰かと比べることが多くなってしまいます。自分はあの子よりブスだ、太っていると落ち込むこともあるでしょう。そう感じた時、『鉢かつぎ姫』を思い出してください。
 本当に自分を幸せにしてくれる人は、見た目よりも行動を見ています。その場限りで取り繕うことが出来る言葉でも見た目でもなく、それまでの生き方が出る立ち振る舞いが幸せの鍵となるのです。
 思い立ったが吉日、今日から鉢かつぎ姫になれるよう頑張ってみてください。始めてみると、案外お姫様っぽくなれるかもしれませんよ。  (コラムニスト ふじかわ陽子)

(コラムニスト ふじかわ陽子)2024-11

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