「過ぎたるは及ばざるが如し」という格言がありますが、健康食品もまさにこの格言どおり、過ぎると毒になることがあります。健康食品を摂取する上で是非気をつけていただきだい過剰摂取の問題について取り上げてみたいと思います。
医薬品を過剰摂取すると毒になるというのは容易に想像がつくと思いますが、通常の食品でさえ過剰に摂取すると毒になることがあります。例えば、お酒の飲みすぎによるアルコール性肝障害、塩分の過剰摂取による高血圧や胃がん、糖分や脂肪分の取りすぎによる糖尿病や動脈硬化など、言われてみればなるほどと思っていただけることも多いのではないでしょうか。
全ての食品は薬になることもあれば、量の多寡によっては毒にもなるので注意が必要です。ただし医薬品と食品を比べると薬から毒に変わるまでの量、いわば安全域の広さが圧倒的に違います。医薬品と食品の中間に位置する健康食品は、この安全域の広さも中間に位置していると考えられます。医薬品ほど毒性は出にくいですが一般の食品よりも過剰摂取の害は出やすくなっています。
健康食品の中で、各種のビタミンやミネラル類は「サプリメント」などと呼ばれて利用されていますが、それらは濃縮や精製が行われることが多く少量でも有用性を発揮しますが、その分過剰摂取に陥る可能性も高くなっています。
サプリメントの中でも特に注意を要するのは脂溶性のビタミン類です。脂溶性とは、水よりも油に溶け易いということです。具体的には、ビタミンA、D、E、Kが脂溶性ビタミンです。脂溶性のビタミンは、肝臓など体内に蓄積され易く過剰症になりやすいのです。
一方、油よりも水に溶けやすいのが、水溶性ビタミンのB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、B12、パントテン酸、ビオチン(以上はB群と総称される)とビタミンCです。これらは尿として排泄され易いので脂溶性のビタミンほどは過剰症になり難いといわれています。
脂溶性ビタミンの過剰症には、以下のようなものがあります。
1)ビタミンA過剰症=食欲不振、皮膚落屑、脱毛、皮膚乾燥、骨・関節痛、肝脾腫、皮膚色素沈着、脳圧亢進など。また、妊娠初期の過剰摂取は奇形児出産のリスクを高めます。
2)ビタミンD過剰症=筋緊張低下、吐き気、食欲不振易刺激性、腹痛、脱水、便秘、下痢、多飲・多尿、かゆみ、腎石灰化症、異所性石灰化、腎不全、尿路結石、高血圧症の悪化など。
3)ビタミンE過剰症=脂溶性のビタミンの中では、比較的過剰症を起こし難いといわれていますが、出血の危険性を高めたり、筋力低下、疲労、吐き気、下痢を起こすことがあります。
4)ビタミンK過剰症=ビタミンKも比較的過剰症を起こし難いのですが、貧血、血圧低下、吐き気、呼吸困難発疹、胃腸障害などを起こすことがあります。
また、水溶性ビタミンであっても、過剰症が全くないということではありません。ナイアシンと葉酸は水溶性ビタミンの中でも比較的過剰症になりやすいといわれていますので、注意したほうがよいでしょう。いずれにせよ商品に記載されている目安量を守ることが重要です。
病気の方や何か気になる症状をお持ちの方は、藁(ワラ)にもすがる思いで、あるいは早くよくなりたい一心で、つい多めに摂取するという傾向があるようです。ビタミンだけを例に取り上げましたが、どのような食品でも過剰に摂取すると健康危害が発生する可能性があるということを知っておいて欲しいと思います。是非、「過ぎたるは及ばざるが如し」ということを肝に銘じて、健康食品をご利用の際には、各商品の目安量を確認し安易に多めに摂取するようなことは避けていただきたいと思います。
(医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永/絵:そねたあゆみ)2012-03