六月に入ると天頂に「春の大曲線」と呼ばれる明るい星の列が見られます。頭の真上を見上げ、やや北には北斗七星があり、その曲線を天頂からさらに南 へ延ばした延長線上に明るい1等星、うしかい座のアルクトゥルスが見られ、さらに南へ伸ばすと、おとめ座のスピカという1等星にたどり着きます。 これらを「春の大曲線」と呼んでいます。中でも北斗七星は、世界で八十八個ある星座の中で、北半球では大昔から、洋の東西を問わずとても重視されてきた星 座です。
日本ではこれを「ひしゃく星」と呼んでいたそうです。北斗七星はご存じのとおり、ひしゃくの形をしています。ほぼ一年中見ること ができます。ひしゃくの水を入れる部分の2つの星、つまり、北斗七星の端の星の距離を、そのままの方向で5倍伸ばしたところに北極星を見つけることができ るのです。
北極星といえば、一年中動かないと思われているかもしれませんが、わずかに動いてはいます。北極星はそれほど明るい星ではあり ません。しかし昔の船乗りたちは北斗七星を元に北極星を探し、北の方角を目指したと言われています。また北極星は、見ている緯度によって見える高さが変わ ります。例えば北緯30度の位置で見ていると、北極星も地上に対して30度の高さに見えます。赤道に近づくほど低くなり、南半球では見ることができませ ん。
北斗七星は星座でいうとおおぐま座の一部ですが、北極星はこぐま座を形作る7つの星のうちの1つです。こぐま座には北極星も含めて目立 つ星はあまりありません。しかし、北斗七星と北極星とのつながりを、星の呼び名にも関連づけているところに、昔の人々の暮らしがいかに空と密着していたか を感じられます。
(文:気象予報士 チャーリー/絵:吉田たつちか)2009-06