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健康食品は本当に効くのか!?

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11-09-03 健康食品は本当に効くのかとよく聞かれることがありますが、なかなか難しい問題です。そもそも健康食品の役割として病気の治療よりも病気にならないような体作りであったりもするわけですから、その効用を検証するというのはなかなか困難な作業です。
厚生労働省は薬事法を盾に取り、健康食品が病気に効くとか病気が治るという表現を使わないよう強く指導しています。例えば「糖尿病の方に向いている食品です」というような特定の病気に効果がある(かもしれない)ことを暗示することさえもいけないということになっています。

唯一の例外が、特定保健用食品(トクホ)なのですがこれも医薬品ではないので治療効果を表現することも特定の病名を挙げることも許されてはいません。許されているのは、「血糖値の気になる方(=糖尿病の方を暗示)に適した食品」、「血圧の気になる方(=高血圧の方を暗示)に適した食品」というような靴の上から痒いところを掻くような表現までです。
そこで、健康食品業界では各健康食品素材の研究成果をメディアに流し、間接的にその食材が何に効くのか広報していくという手段がとられています。
しかし、注意をしなければいけないのが、それらの研究成果の証拠レベルがどれほどのものかということです。医学的な証拠のレベルには大まかに言って3段階があります。一番基礎的なレベルとして、インビトロ(in vitro=試験管内での実験)次にインビボ(in vivo=生体内での実験、動物実験)、そして最後にヒト試験(臨床試験)ということになります。
なぜ、最初からヒト試験をして効くか効かないのか白黒つけないのかというと、安全性の問題もありますが、何と言っても費用対効果の問題です。
インビトロの実験というのは、本来メカニズムを研究したりスクリーニング(=ふるいにかけること。つまり、たくさんの素材の中から有用なものを選び出すことです)のために行われるものです。例えば、ある医薬品が血圧を下げる効果があったとすると、医薬品の登録申請の際には、その医薬品はいったいどのようなメカニズムで血圧を下げているのか作用機序を明らかにしておかなければならないのですが血管拡張する効果(血管が拡張すると血圧は下がります)があるのか、それとも血圧を上げるホルモンの働きを抑制するのかといったようなそれぞれの作用する場所で起る反応を試験管の中で再現してメカニズムを調べています。
ここで注意が必要なのですが、インビトロの実験成果は実は余り当てにはなりません。どういうことかと言いますと、インビトロの試験結果で有効であっても実際に薬物や食品を口にすると、消化・吸収の過程を経るので、消化の段階で有効成分が分解したり、吸収率が悪くて有効な量が吸収されないということがよく起るからです。
これに対し、インビボの動物実験はある程度信頼性があると言えます。実際に、生きた動物の体内で消化・吸収の過程を経た上でも効果があったわけですから、人間においても効果を発揮することがかなり期待できます。しかし、動物実験においてもいくつか注意しなければならない点があります。
まず、経口投与の実験であるかどうかということです。動物実験では、胃の中へ直接投与する経口投与の他に、お腹や皮下に注射する腹腔内投与や皮下投与などの方法があります。経口投与は誤って気管に入るなどの事故もあるために熟練が必要である上、作業効率も悪いので、腹腔内投与や皮下投与の方がよく実験に用いられる傾向にあります。しかし、医薬品ではない健康食品が注射で使用されることはなく、消化・吸収の段階を経ていないそれらの投与方法では実際に食べて効くかどうかという証明にはなっていないのです。
さらに、動物実験には「種差」があるということも気をつけなければいけません。投与する物質と動物の種類によっては、人間と代謝が異なる場合があり、動物では有効であっても人間には効果がなかったり、逆に動物実験では効果がなくても人間では効果を発揮するということがあります。
以上まとめますと、信頼できる健康食品を選ぶには、理想的にはヒト試験のデータまで揃ったものが好ましいのですが、①「インビボの動物実験」であり、しかも②「経口投与の実験である」という二つのポイントを満たしたデータを揃えているか否かということを指標にされるとよいのではないでしょうか。
(医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永/絵:そねたあゆみ)
2011.09

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